ビジネスの場において、営業職の人は話が上手というイメージはありませんか?これは、自分の伝えたいことを伝えつつ、上手に相手の話を引き出しているからかもしれません。いわゆる「聞き上手」とも言える人は、営業職に限らずビジネス面で大変有利です。
聞き上手は、生まれ持った才能だけでなく、身につけることができるスキルです。私もセミナーやクライアントの才能開発をするために聞く力を伸ばしていきました。今回は、聞き上手になるためのスキルやテクニックについて、一部具体例も交えながらご紹介します。
「聞き上手」のメリットとは
「聞き上手」である人は、ビジネス面に限らず多くのメリットがあります。
信頼関係を構築できる
聞き上手な人は、相手へ“自分の話を聞こうとしている、理解しようとしている”という印象を与えるため、信頼関係を築きやすくなります。
ビジネスにおける信頼関係は、今後の事業継続だけでなく、既存の取引先から新規顧客の紹介を受けるなど、業績アップにつながる可能性もあります。
周囲の人から好感を得られる
人の話を聞くスキルがあると、周囲の人から好かれやすくなります。自分の話を聞いてもらえると、誰しも嬉しいですよね。聞き上手な人は、ただ聞くだけでなく、相手が伝えたいことをきちんと汲み取り、整理する力にも優れています。ビジネスの場において、話や情報を的確に捉えて整理できる人は重宝されるでしょう。
多くの情報や知識を収集できる
聞き上手な人と話すと会話が弾むため、相手に「この人ともっと話したい、また話したい」という気持ちを抱かせます。この感情が、向こうから話を持ち掛けてくるように相手を動かし、自然と情報や知識が集まるようになります。 知りたい情報の中には、最新すぎて調べてもなかなか出てこないようなものもよくありますよね。ビジネス面では、このような生きた情報も聞き上手な人には集まってくる可能性が高いのです。
仕事の内容及び指示が正確に理解できる
聞き上手な人は、仕事の内容や指示を正確に理解できる人が多いです。これは、相手から情報を引き出すスキルに優れているためと考えられます。聞き上手な人は、ビジネスにおいて相手が話している内容でわかりにくい点があっても、上手に聞き出すことができるのです。このとき、単刀直入に聞くのもいいですが、話の流れで自然に聞けるのが聞き上手な人の特徴でしょう。
仕事の内容や指示を正しく理解できる人は、聞き直したり再確認したりする時間が省かれる分、仕事も早く進められます。また、一度で指示が通ればまたこの人に仕事を頼みたい、とも思ってもらえるでしょう。
なぜビジネスにおいて「聞く力」が重要なのか?
ビジネスにおいて聞く力が求められる背景には、多くの理由があります。
顧客の心理的欲求を満たすことができるため
聞く力が優れている人は、相手の心理的欲求を満たし、信頼関係につなげることができます。ここでいう心理的欲求とは、承認欲求とも言われます。人は無意識のうちに相手から自分を理解してほしい、認めてもらいたいという欲求があり、聞き上手な人は会話の中でこの欲求を満たすことができるのです。ビジネスにおいてこの欲求を満たすことは、顧客から信頼を得ることにつながります。
顧客の潜在的ニーズが掴みやすくなるため
聞く力があると、顧客の求めていることも掴みやすくなります。これは、聞く力がある人は顧客が表面には出さない潜在的なニーズを聞き出すスキルにも優れているからです。相手は、この人は自分を理解してくれている、と思うと、言い出しづらかった話も話しやすくなり、聞き手は求めているものや要求の核心に触れることができます。
顧客に安心感を与えるため
ビジネスにおいて、相手に安心感を与えることはとても大切です。聞く力がある人は信頼を得やすいため、この人に仕事を任せられる、一緒に仕事を進められる、といった安心感を与えやすくもあります。これは、今後のビジネスパートナーとしての安定した関係や、新しい事業の話を進めたいときなどにも有効に働くでしょう。
「聞き上手」になる具体的な方法
実際に「聞き上手」になるためには、どのような方法があるでしょうか。
自分の現状を正しく把握する
まずは、自分が普段どのような会話を行っているかを確認しましょう。
たとえば、まだ相手が話している段階で話を遮っていないか。また、相手の話す内容に対し、適当なタイミングでの相鎚やリアクションができているか。リアクションができていたとしても、同じようなリアクションばかりになったり、薄い反応になったりしていないか。
できれば、会話の場面を第三者に見てもらい、感想などを聞くのがおすすめです。
相手の話にしっかり集中する
基本的なことですが、相手が話しているときは、きちんと相手の話に集中しましょう。このとき、「自分はあなたの話をしっかり聞いている」という姿勢を示すことが重要です。相手に顔や身体を向けるだけでも相手からの印象は違うでしょう。
また、ビジネスの場面で多いタブレットやパソコンを使っての会話では、見せたい画面を相手側に向け、同じ画面を見るのもおすすめです。画面と向き合い、目を離さずに話しているときとは大きく印象が変わります。
否定的な言葉を使わないようにする
相手の話に対して、否定的な言葉は使わないようにしましょう。とくに相手の話に対して意見を求められた際などは、たとえ自分とは異なる意見だったとしても、否定するような言動は避ける方がよいでしょう。
相手とは異なる意見を伝えたい場合、まずは相手の意見を受け入れる姿勢を示します。その後、自分の意見を述べるようにすると、ネガティブに捉えられにくくなります。否定的な言葉を使ってしまいそうになった場合は、「状況は理解できる」といったクッション言葉を挟んでから話すと、相手の気分を害することはありません。
ここでは具体例も挙げながら「聞き上手」になるための方法を紹介しました。次は、さらにもう一歩踏み込んだ、ビジネスに活きる聞き方のコツを紹介しましょう。
ビジネスの会話に活きる「聞き方のコツ」の具体例
実際にビジネス会話で使える「聞き方のコツ」を4つに分けて紹介します。
①正しく聞く
まずは相手の話を正しく聞くことが大切です。ポイントは、「事実」と「解釈」をきちんと見極めること。たとえば、「○○社の新商品は10万円です」と「○○社の新商品は高いです」では、前者は事実、後者は解釈となります。10万円というのは誰が見ても変わることがありませんが、高いかどうかは人によって感じ方が異なるのです。
ビジネス場面においては、この事実と解釈によってその後の対応に影響することもあります。相手の話を聞く際は、事実か解釈なのかを意識しながら聞くようにしましょう。
②端的に言い換える
相手の話を正しく聞くことができた後は、相手の話を「端的に」言い換えてみましょう。言い換えることで「私はこれだけ話を理解している」ということを伝えられるだけでなく、相手もどれだけ話が伝わっているかがわかり、その後の話もスムーズになります。
このときポイントとなるのが、「端的に」ということ。相手が話していた10の話を5で言い換えてもあまり意味はありません。たとえば「つまり○○ということですね」とひとことでまとめるのが理想です。こうすることで、会話によいリズムも生まれるでしょう。
③相手の気持ちを正確に察する
本来、人は「話の内容よりも、気持ちをわかってもらいたい」という願いを持っています。よく相手の立場になって考えて…という話を耳にしますが、立場ではなく、相手の気持ちになること、つまり、気持ちを察することが重要なのです。
たとえば、職場において、自分の席で一人昼食を食べている人がいたときにどのように考えるでしょうか。ここで「一人で寂しそうだな」と考えるのは、相手の気持ちになっているとは言えません。もしかしたら相手は一人でいるのが好きな人なのかもしれないのです。
相手の気持ちになる、気持ちを察するということは、あくまでも相手がどのように思っているかを想像することなのです。
④相手の頭の中を整理してあげる質問をする
①~③までできたら、もう1ステップ加えるとさらに聞き上手な人になれるでしょう。それは、相手が考えを整理できるような質問をすることです。相手が伝えたいことの核心に触れるだけでなく、相手が言葉にできていない考えや気持ちを整理し、伝えられるようにしてあげると、よりレベルの高い聞き上手な人となれるでしょう。
まとめ
聞き上手のメリットやビジネスでの重要性、そして実際に聞き上手となるための方法までを紹介しました。今回紹介した内容を「聞く力の知識」として覚えるだけでは意味がありません。しっかりスキルとして身につけ、ビジネスの場で活かすことが大切です。