この記事では、「自己実現」について考えていきます。自己実現とは心理学用語。さまざまな解釈がありますが、ビジネスの場において間違えて使用されているケースも少なくないそうです。今回はマズローの欲求5段階説をもとに、自己実現とはどのようなことなのか解説していきます。マズローの自己実現の法則を仕事上で活かす方法もお伝えしていくので、ぜひ最後までご覧ください。
心理学における「自己実現」
心理学において、「自己実現」という用語には多くの心理学者がさまざまな解釈を構築しています。
自己実現とは
アメリカの心理学者アブラハム・ハロルド・マズローによると、自己実現とは「自分にしかできないことを見つけて成し遂げる」ことだそうです。成長していく「過程」のことで、社会や周りの利益につながる状態であること、という解釈もあります。「犠牲を払ってでも目標を達成すること」や「やりたいことがなんでもできる状態」とは少し異なることを心に留めておきましょう。
「自己実現理論」として有名な、マズローの欲求5段階説をもとにして考えると、自己実現は5段階欲求の頂点に位置し、下位の欲求を段階的に叶えていくことで得られる高次的な欲求であるといえます。
マズローの欲求5段階説
マズローの欲求5段階説をもう少し細かくみていきましょう。
ピラミッド型を思い浮かべてください。マズローの欲求5段階説でピラミッドの底辺を支える欲求は生理的欲求です。「お腹が空いた」「眠い」「トイレに行きたい」など人間が生きていくうえでもつ基本的な欲求となります。これらが満たされることで、ひとつ上位の安全欲求が生まれます。安全欲求は、「安心したい」「安全な場所にいたい」といった欲求です。それらが満たされると、「仲間がほしい」「孤立したくない」といった社会的欲求が生まれ、さらに「周りから認められたい」という承認欲求が生まれます。ここまでが「欠乏欲求」に分類される部分です。
自己実現欲求は、これらの欲求がすべて満たされることで生じる欲求で、ピラミッドの頂点にあたります。自己実現欲求は「成長欲求」に分類され、生理的な欲求や社会的な欲求といった欠乏欲求を超えて、自分の目的を果たすことを目指す状態です。健康をそこねてしまったり、社会性を犠牲にしたりして目標を達成することとは異なり、欠乏欲求が満たされたうえで自分のためにゴールを設定し、全うしていくプロセスそのものとなります。
ちなみに、マズローの欲求5段階説にはさらに6つ目の欲求もある、といわれていることをご存知でしょうか。それが自己超越の欲求です。自分のためだけでなく「他社のためになにかしたい」「世界のためになにかしたい」といった欲求で、ここに辿り着ける人はごくわずかだそうです。たとえば、マザー・テレサなどの偉人が挙げられます。
自己実現に不可欠なマズローの欲求5段階説の具体的活用法
自己実現に不可欠なマズローの欲求5段階説(マズローの法則)は人間性心理学に基づいたもので、さまざまな場面で活躍します。この法則をビジネスや生活の場でどのように活用できるか、具体的にご紹介していきましょう。
まずは明確に行動できるよう、欲求の軸を見極める
マズローの法則を顧客や自分の心理に当てはめることにより、マーケティングやモチベーションアップにおいて活用できます。
顧客のニーズや自分の欲求をマズローの欲求5段階(生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求)の軸に当てはめて考え、足りない部分を見極めることで、とるべき対策や補うべき行動を明確にしていくことができるのです。
マーケティングにおいての活用法
マズローの法則に商品やサービスを当てはめながら物事を思考することで、マーケティングの役に立ちます。スポーツ飲料のマーケティングをすると仮定して、顧客の欲求を当てはめてみましょう。
<スポーツ飲料に対する5段階欲求の例>
生理的欲求:喉を潤したい
安全欲求:熱中症などの体調不良を避けたい
社会的欲求:仲間みんながスポーツ飲料を持ってきているから自分も飲みたい
承認欲求:おしゃれなパッケージのスポーツ飲料を選んでSNSなどで自慢したい
自己実現欲求:なし
このようにマズローの法則に当てはめて書き出し、改善ポイントを見つけていきます。たとえば、承認欲求部分が満たされていないようであれば魅力的な限定ボトルを作りSNSウケを狙う、などで対策を打つことができます。
ちなみにレッドブルは「翼を授ける」というブランドメッセージを発信する事で、狙った目標にたどりたい、自分の夢をかなえたいという自己実現欲求を持っている人にも訴求しています。
足りない部分を補うことで商品力をアップさせ、売上を伸ばしていけるチャンスを作る。これがマーケティングへの活かし方です。
・就職・転職時においての活用法
顧客ではなく、自分の欲求に目を向けることで、マズローの法則を就職や転職時に活かすこともできます。活躍するのは自分の目指す指針や、目指す企業を明確化したいときです。
<就職活動における5段階欲求の例>
生理的欲求:お金を稼ぎたい
安全欲求:福利厚生の安定した企業に入りたい
社会的欲求:仲間と切磋琢磨できるような企業に入りたい
承認欲求:優良企業に内定して仲間や親から認められたい
自己実現欲求:自分の強みを活かした自分にしかできない仕事をしたい
たとえば上記のように分析していくと、自然と自分の志望する業界や企業の傾向を明確にしていくことができます。
ビジネスにおいての活用法
マズローの法則を仕事のモチベーションアップに活用することも可能です。次の例で考えてみましょう。
<ビジネスにおける5段階欲求の例>
生理的欲求:お金を稼ぎたい
安全欲求:安定した暮らしをしたい
社会的欲求:重要なプロジェクトチームに所属したい
承認欲求:プロジェクトリーダーに抜擢されて周りから頼りにされたい
自己実現欲求:得意先から信頼される仕事をしたい、尊敬されたい
たとえば、社会的欲求が満たされていないようなら、プロジェクトチームに所属できるよう仕事に真面目に取り組んだり上司にアピールしたりと、とるべき行動が明確になり、モチベーションアップにつながります。
自己実現を叶える具体的アプローチ
マズローの法則をマーケティングやモチベーションアップの場で活用する方法を理解したところで、次は、マズローの法則に基づいて自己実現欲求を満たすまでのステップを具体的にご紹介していきましょう。 自己実現欲求を満たすには上記4つの欲求を満たすことが不可欠で、順序が入れ替わることはないと一般的に言われています。
- 経済的に安定する
自己実現欲求を満たすまでのステップで基本となるのは、生活の基盤が保証されている安心感が得られていることです。生理的欲求と安全欲求が満たされている状態となります。
- 何らかの組織の一員となる
さらに、会社などの組織に所属していたり、何らかのチームに所属していたり、社会的欲求が満たされていることが重要です。
- 他人に認めてもらえるような行動をする
組織の中などで活躍し、周囲から認めてもらうことで承認欲求が満たされている状態を目指します。
- 目標を掲げる
自己実現欲求を満たすには明確なビジョンが必要です。「地球環境のためにエコな商品を開発したい」「地域の安全のために誰からも頼りにされる警察官として貢献したい」など、自分にしかできない周りのためにもなる目標を掲げてみましょう。段階的に欲求を満たし、目標を明確にもつことで自己実現欲求を満たすための行動が可能となるのです。
自己実現を叶える際の注意点
最後に、自己実現を叶える際の注意ポイントを解説していきましょう。
自己実現の誤用に注意する
冒頭でも解説しましたが、自己実現を「ボロボロになってでも目標を達成すること」、「何でも自分の思うようにいく状態」と解釈をしている場合は注意が必要です。心理学用語として使用されている「自己実現」の意味合いとは少し異なるためです。自己実現とは「自分にしかできないことを見つけて成し遂げる」プロセスのこと。言葉の意味をはき違えないよう気をつけましょう。
周囲からは幸せそうに見えない可能性もある
自己実現は、自分視点でありあくまでも主観がベースです。自分では幸せを感じ、満足している状態でも、ほかの人の視点からするとそうは見えないケースもあります。周りの人から自分がどのように見られているのかについても適度に気にかけておくと、過度な心配をかけずにすむでしょう。
まとめ
自己実現とは、マズローの法則をベースに考えると欠乏欲求を満たしたうえで「自分にしかできないことを見つけて成し遂げる」プロセスのことです。解釈や使い方を間違えないよう気をつけましょう。自己実現について理解するだけで満足してしまってはもったいないので、ぜひビジネスの場で活かしてみてくださいね。
また自己実現と才能開花は密接についてながって居るので、興味のある方は才能心理学についても理解を深めてみてください。