この記事では、リフレーミングについて詳しく解説するとともに、期待できる効果や、オフィスでの使用例について紹介します。
心理療法の用語である「リフレーミング」を有効活用することで、ビジネスの可能性が大きく広がるばかりでなく、自分自身との向き合い方や、周りの人たちとの付き合い方も変わってくるでしょう。
リフレーミングとは
リフレーミングとは、様々な出来事を今までとは違った視点で見ることを指す心理学用語です。
私たちはあらゆる事柄を、自分たち独自の視点で見ており、この視点のことを「フレーム」と呼びます。そして、もともとの視点を変えて物事を見ることを「リフレーミング」といいます。
視点を変えることによって、物事の見え方、捉え方は変化します。例えば、ピンチだと思っていたことも、視点を変えることでチャンスに思えたり、短所だと思っていた部分が長所に思えたりします。
物事や事象は、初めから「良い・悪い」が決まっているわけではありません。自分自身で勝手に良し悪しを解釈しているにすぎないのです。リフレーミングとは、その性質を利用して、少々乱暴にいうと「自分自身や周りにとって、都合のいいように解釈しよう」というものです。
リフレーミングは、自己肯定感を高めるために取り入れるケースが多いですが、メリットはそれだけではありません。
物事の角度を変えたり、俯瞰して見たりすることによって、視野が広がり、その後の思考や行動にも大きな変化をもたらしてくれるのです。
ただし、リフレーミングは、表面的に前向きな言葉を使用すれば、それでいい、というわけではありません。
深く思い悩んでいる人に、上辺だけの励ましの言葉を掛けても、解決には至らず、逆に悩みを深めてしまうことがあります。
リフレーミングとは、物事の枠組みを捉え直すことで、理想的な方向へと導くためのものです。誰にでも効果を発揮してくれる、というわけではないので、現在の言葉やフレームを尊重しつつ、変容を促す姿勢を取るようにしましょう。
リフレーミングで期待できる効果
リフレーミングでは、メンタル面だけでなく思考面や行動面にも様々なメリットが期待できます。ここでは、主に期待できる効果を紹介します。
失敗や否定、批判を自分の糧にできる
何かにチャレンジして失敗したり、誰かに否定されたりしてしまうと「自分には無理だ」「自分には何の取り柄もない」というネガティブな心理状態になってしまいがちです。一度落胆してしまうと、自分で状況を改善することは、非常に難しくなります。
しかし、ここでリフレーミングを行うことにより、180°見方を変えてみます。つまり、「失敗することで、大きな学びを得られる機会が訪れた」「相手の批判から、自分に何が求められているか深掘りしてみよう」という切り口で考えてみるのです。
このように、失敗や批判、否定をリフレーミングすることで、自分自身のやる気を高めることが可能になります。
新しい仕事に積極的に取り組める
新しい仕事やプロジェクトを任されて、右も左もわからないときには、非常に不安になってしまいます。しかし、ここでも視点を変えて、「学びのチャンスだ」と捉えてみましょう。
「新しいキャリアを積むチャンスが訪れた」「もし上司だったら、この仕事をどのように進めるか考えてみよう」
このようにリフレーミングをすることで、新しい仕事へのモチベーションがアップするでしょう。
緊張するような場面でも、最高のパフォーマンスができる
会議での発表やプレゼンテーションの場では、たいていの人がプレッシャーや不安を感じてしまいます。また、緊張のあまり、100%のパフォーマンスができなかった、という経験がある人も少なくありません。
このような緊張する場面でも、リフレーミングは効果を発揮します。緊張する場面に遭遇したときは、「本気モードになってきた証拠だ」「最高のパフォーマンスをするために、緊張は必要不可欠である」と考えてみましょう。
プレッシャーを感じる場面で最良のパフォーマンスができる人は、緊張を「準備の鼓動」「ときめき」と言い換えて、最高の状態で本番に臨めるように、自分自身の気持ちを高めていくのです。
今すぐオフィスで実践できるリフレーミングの具体例
リフレーミングは、ビジネスシーンにおいても、大きな効果が期待できます。ここでは、オフィスで実践できるリフレーミングについて、具体例と共に解説していきましょう。
新たな発想を得たいとき
仕事が滞っていて、新たな着眼点が欲しいときに活用できるのが「アズイフ(As if)リフレーミングです。アズイフリフレーミングとは、「仮に◎◎だったら」「もし△△だったら」というように、行き詰まった状況に対して仮定を置いて、可能性や発想を広げる方法です。
仮に、部下の仕事が停滞しているときは、「もし、この案件が得意な〇〇君だったら、どうやって取り掛かるか想像してごらん」と声掛けしてみましょう。
このように、立場や視点を変える声掛けで、相手は物事を多角的に捉え、状況を打破できるきっかけを見つけられるかもしれません。
状況が行き詰ったとき
行き詰まった状況に対して有効活用できるのが「wantでのリフレーミング」です。これは、現状に対して「では、どうしたい?」と欲求を持ち込むリフレーミングになります。
欲求には、必ずそれを達成するための方法があります。それを意識すれば、行き詰まった状況から進み出ることができるのです。
例えば、上司に叱責されて、モチベーションがダウンし、その結果仕事も停滞してしまった部下がいたとします。そんな部下には「どうして欲しかった?」と問いかけてみましょう。すると部下は、「もっと具体的に指示を出して欲しかった」「〇〇のタイミングで指示を出してもらいたかった」など、自分の欲求を明言するでしょう。そこではじめて「では、そうしてもらえるために、どうすればいいだろう?」と、欲求を実現するための具体的な手段が考えられるようになるのです。
部下が失敗したとき
部下が失敗して落ち込んでしまったときに有効なのが「メタファーによるリフレーミング」です。メタファーとは「比喩」を意味します。メタファーによるリフレーミングとは、誰かの格言や名言を、経験をもとにして状況を見直す方法です。
もし、失敗した部下が映画好きならば、ウディ・アレンの「もし、時々失敗することもない、というのなら、それは、あなたがあまり革新的なことをしていないという証拠だ」という言葉を用いて、失敗はチャレンジした証明である、というリフレーミングを行いましょう。
このときに持ち込むメタファーは、相手が関心を持っている分野や人物のものだと、より効果が高くなります。
部下が悩んでいるとき
悩みに対して効果的なのが「解体によるリフレーミング」です。悩みや状況を細かく解体、分解することによって、様々な情報を引き出す方法です。
例えば部下が、「自分には何の取り柄もない」と悩んでいたとしたら「どんな取り柄が欲しいのか」「誰と比べて取り柄がないと思うのか」というように、細かく悩みを解体して、解決するための方策を探すきっかけを与えてあげましょう。
まとめ
リフレーミングを効果的に取り入れ、物事を違った視点で見ることで、視野を広げ、自己肯定感を高めることができます。
また、リフレーミングをビジネスに活用すれば、オフィスの人間関係が良好になることで、互いに高め合うことに繋がり、社員のモチベーションもアップするでしょう。
しかし、心理学の知識やノウハウとして、リフレーミングを理解するだけでは意味がありません。自分自身や相手の才能をしっかりと把握したうえで、リフレーミングを的確に活用することが大切なのです。