この記事では、バーナム効果への理解を深めながら、その効果を応用していける職種を紹介していきます。同効果の理解を深めていくと、相手のニーズを正しく知ることができるなど、あなたのビジネスに役立ちます。とくにセールスやマーケティング、コンサルティングなどの仕事に就いている人はぜひご一読ください。
バーナム効果とは?
まずは、バーナム効果について理解を深めていきましょう。
誰にでもあてはまることを「自分のことだ」と思わせる効果
バーナム効果とは、誰にでもあてはまりそうな曖昧な言葉を自分のことと感じさせる現象です。セールスやマーケティングのシーンで使われることも多く、相手に心を開いてほしいときなどに効果を発揮します。
身近なところだと、占いなどにもバーナム効果が活かされています。星座や血液型、誕生日など属性ごとに診断することで自分だけの占い結果だと思わせることができ、「当たっている」と感じるのです。
バーナム効果の由来となったのが、日本では2018年に公開された映画「グレイテスト・ショーマン」のモデルにもなったP・Tバーナム氏です。19世紀のアメリカに生まれた同氏は商才に優れており、サーカスをはじめとしたさまざまな事業を展開。人の心理を意のままに動かす力に長けた彼の「We’ve got something for everyone(私たちは誰にでもあてはまる要点がある)」という言葉から、のちに心理学者のポール・E・ミール氏が不特定多数に向けた言葉であっても自分だけにあてはまると思ってしまう現象をバーナム効果と名付けています。
バーナム効果が効きやすいのは「自尊心」や「安心感」が満たされるため
誰にでもあてはまるような曖昧な表現を用いるバーナム効果でも、個人の特徴を捉えていたり深掘りされたりすることで受け取る側が「自分のことだ」と感じやすくなり、自尊心や安心感が満たされます。
同効果が効きやすいのは、この2つが満たされる場面です。そのため、次のような特徴を持つ人はとくにバーナム効果が発揮されやすいでしょう。
- 深い指摘をし合える親友やメンターがいない
- 自尊心が低い
- 不安を抱えている
- 依存的な一面がある
一方で、自尊心が高くて理性的なタイプの人にはあまり効果が発揮されません。これは、曖昧な発言をすぐに理解して思慮深く多様な視点で捉えるためだと言います。しかし、多くの人は「自分のことを言及されること」を好むため、ネガティブな印象をもたれていない限りバーナム効果は少なからず発揮されるでしょう。
バーナム効果を高めるテクニック
仕組みを理解しておけば、バーナム効果を効果的に発揮することが可能です。次の3つのポイントを確認しておきましょう。
特定の相手のみにあてはまるように話す
バーナム効果を発揮したいときには、話す対象を絞る意識を持つことが大切です。不特定多数に話しかけるよりも対峙する相手のみにあてはまるような話し方をするほうが効果を発揮します。これはバーナム効果を計るために行われた実験結果からも分かっており、同じ文章を一斉に渡すよりも1人ずつ「あなたに」と渡したほうが相手からの信用や満足感が得られやすいのだと言います。
こうしたことからも、「みなさん」と言うよりも「あなた」や「〇〇さん」と呼びかけたほうがバーナム効果は発揮されやすいと言えるでしょう。たとえ同じ内容や多くの人にあてはまることであったとしても、「あなたに言っている」と思われるように伝えることがポイントです。
できるだけポジティブな内容を多く伝える
人は、ネガティブな情報よりも前向きでポジティブな内容を信じやすい傾向があるため、できるだけ明るい内容をたくさん伝えたほうがバーナム効果は発揮されます。
もちろん、セールスの場面などでは自社のポジティブな効果だけでなくネガティブな要素を多少含めたほうが相手の印象にも残りやすいですが、全体的にマイナス面ばかりが強調されると話を聞いてもらいにくくなります。相手に受け入れてもらいたいときには、できるだけ多くのポジティブな内容を伝えましょう。
あらかじめ相手の信頼を得ておく
バーナム効果が発揮されるかどうかは、相手との信頼関係の有無が影響します。そのため、効果を発揮させる前提として相手からの信頼を得ておくことが大切です。とくに人はより高い地位の人間や信頼性の高い情報ソースのほうを信じやすい傾向にあるため、こうした条件が揃えておくと話がスムーズに進みやすいでしょう。
権威や肩書き以外にも、過去の実績や仕事内容に関する詳しい情報を提示することも相手からの信頼を得るときには効果的です。これまで行ってきた経験のなかに分かりやすい実績や伝わりやすい仕事がある場合は、伝えるようにするとよいでしょう。
バーナム効果が活かせる職業
バーナム効果は、さまざまな職業で応用することができる現象ですが、なかでも次の職業に就いている人は効果を感じやすいでしょう。
コンサルティング業などアドバイスをする職業
バーナム効果は相手に心を開いてほしいときなどに効果を発揮するため、アドバイスを行うコンサルティング業などの仕事に活用できます。バーナム効果を活かすことで、クライアントの考えや方向性の本音を引き出したいときに「私はあなたのことをきちんと理解しています」という姿勢を示して相手を尊重することが可能となるからです。
たとえば、少し気難しい経営者の場合には「〇〇さんは厳格な雰囲気を持っていますが、努力している部下を広く受け入れる優しさを感じますね」など、相反する要素を伝えていくと相手の心が開きやすくなります。その上で、クライアントを尊重するように振る舞うことで、相手からの信頼を少しずつ得ていくことができるでしょう。
ただし、あくまでバーナム効果はコミュニケーションを円滑にするテクニックの1つであり万能ではありません。また、相手によってはバーナム効果の存在を知っていることもあるでしょう。こうした場合にマイナスな印象を与えないためにも、心にないことを言うのではなくきちんと相手を観察して言葉を選ぶことが大切です。
顧客の信頼を得ることが重要な営業職
バーナム効果を発揮すると、相手からの本音も引き出しやすくなります。そのため、クライアントからの信頼が重要な営業職にも活かせるでしょう。たとえば、バーナム効果を用いて「コスト削減」など、どの企業にもあてはまりそうな関心事を投げかけたとします。すると相手から「固定費の出費が痛手」「人件費がかさんでいる」など、具体的な内容が返ってくることがあるでしょう。
ここから、何か解決できる自社商品やサービスはないか、相手のメリットになることはないかと課題を深掘りしていくことができればスムーズに商談が進めやすくなります。きっかけはどの企業にもあてはまる内容であったとしても、そこからクライアントが本当に求めるものにたどり着ければより信頼関係を高めていけるでしょう。
広告やキャッチコピー作成時にもバーナム効果は活かせる
バーナム効果は、より多くの人にあてはまる言葉を用いることで、たとえたくさんの目に触れる広告であったとしても特定の相手に語り掛けることが可能です。そのため、広告やキャッチコピーを作るときにも活かせます。たとえば、テレビのCM広告などでも「寝不足のあなたに…」「腰・肩が辛いあなたに…」といった商品訴求は頻繁に見かけるものです。
そのほかにも、ダイエットサプリの広告などで使われる「痩せたいけれど食べたいあなたに」「いつも食べ過ぎてしまうあなたに」など、多くの人が思わずうなずいてしまうシチュエーションに訴えるのもバーナム効果が活かされている広告の1つです。
バーナム効果を理解しながら自社製品を使ってほしい人に訴求していくことができれば、一層相手に響きやすい広告やキャッチコピーが生まれるでしょう。
まとめ
バーナム効果は、セールスやマーケティングなどの場面でも役に立つ効果です。理解しておくと、ビジネスにもプラスとなるでしょう。ただし、こうした心理学の知識やノウハウは知っているだけではあまり意味がありません。実践しながら自身の得意なこと、向いていることなどに落とし込んでいくことが重要です。どこに落とし込めばよいのか分からない人は、まずはあなたの才能に目を向けてみましょう。