この記事では、ビジネス上でのコミュニケーション能力の重要性や、中でも特に重視される能力について解説していきます。コミュニケーション能力は、人間関係を築く上で欠かせない力です。その能力は、日常生活はもちろん、ビジネス上の人間関係においても重要です。
しかし、実際にはコミュニケーション能力に不安があるという声も少なくありません。また、よりコミュニケーション能力を高めたいという人も多いでしょう。この記事の後半では、コミュニケーション能力の向上方法もまとめているため、ぜひご一読ください。
ビジネスにコミュニケーション能力が必要な理由
あらゆる仕事は、常に人と関わり合いながら進んでいきます。たとえ直接話をする機会がない場合でも、メールや電話などを介して人とつながっていることがほとんどです。フリーランスのように1人でものを作り出す仕事であっても、依頼する人や使う人が存在します。
このように、自分以外の他者とスムーズに意思疎通を図ることはビジネスシーンにも欠かせない能力です。こうしたお互いの意見や考えをスムーズに伝えていく力を「コミュニケーション能力」と呼びます。
コミュニケーション能力は、1997年から経団連が行う「新卒採用に関するアンケート調査結果」でも、選考で重視する点として16年連続1位を取り続けている能力です。この結果からも、ビジネスシーンでコミュニケーション能力が強く求められていることが分かるでしょう。
特に必要なコミュニケーション能力3つ
ひと口にコミュニケーションといっても、必要な能力は細分化されます。例えば相手への理解を示すためには、話す・聞くという行動のほかに、質問する能力が問われるシーンもあるかもしれません。ここからは、ビジネスシーンで特に必要だと考えられている3つのコミュニケーション能力を見ていきましょう。
話を聞く能力
コミュニケーションを円滑に図るためには、相手の考えを理解しようとする姿勢が大切です。もちろん、人それぞれ価値観や立場が違うためすべてを理解することは難しいですが、だからこそ話を聞く能力は求められています。
例えば、部下から「午前中のプレゼンは苦戦しました」と話しかけられたとします。しかし、上司からは「プレゼンで苦労するのは準備が足りないからだ。私のときは……」と返ってきました。この場合、おそらくこの後は部下が聞き役に回ってしまうでしょう。
部下としては、プレゼンがどのように大変だったかを上司に聞いてほしい場面でありながら、その機会を奪われています。こうした出来事が積み重なると、上司に相談することを避けるようになるかもしれません。
このように、人によっては聞き役を求められている場面であっても、相手の話を遮って自分の意見を語ってしまうことがあるでしょう。簡単そうに思えても、「話を聞く」ということは意外と難しいものです。お互いに気持ちの良いコミュニケーションを取るためには、相手の考えや気持ちを受けとりながら話を聞く能力が必要といえるでしょう。
話をする能力
プレゼンや会議など、製品の良さや自社の考えを相手に伝えなければならないシーンは数多くあります。こうしたときには、自分の考えを相手にも理解してもらえるように話していく能力が必要です
例えば、プレゼンの場面などで専門用語を使うと、分かりやすく説明しているつもりであっても相手に伝わらないことがあります。専門用語は、自分たちの業界では当たり前に使われていたとしても、他業種の相手にはイメージがわかないことも少なくないからです。
こうしたときには専門用語を違う言葉に置き換えて説明したり、相手がイメージしやすい例を挙げてみたりするだけで、印象が大きく変わります。このようにビジネスシーンでは、相手の反応を見ながら柔軟に会話を進めていく能力が欠かせないでしょう。
説明が上手な人は、話の途中で「ここまでで質問はありますか?」など、相手の理解度を確かめながら話をしています。自分のペースではなく、相手が理解するスピードに合わせて話をしていくことが大切なのです。
相手と交渉できる能力
聞く・話すといった基本的な能力に加えて、ビジネスシーンでは相手と交渉していく能力も重要です。交渉の場面では、立場や利害関係などが異なる人同士が、お互い納得できるゴールを目指して話し合いを進めていきます。
その目的は、あくまでお互いが納得できる結論に至ることであり、一方的に自社の意見を押しつけたり、説得したりすることではありません。「勝ち負け」で判断しないことが、交渉を上手く進めるポイントです。
交渉する能力に優れている人は、相手のことをよく理解していることが多いです。交渉する相手がどんな権限を持ち、組織内ではどのようなミッションを与えられているのか、ビジネスをする上でどんなニーズがあるのかなどを的確に捉えています。つまり落とし所を見つける力に秀でているのです。
このように、ビジネスをスムーズに進めるためには、交渉力のように他者を巻き込んで大きな力に変えていく能力も欠かせないでしょう。
コミュニケーション能力を高める具体的な方法
コミュニケーション能力は、学んで実践することで上達できます。ここからはコミュニケーション能力を高める具体的な方法を見ていきましょう。
目的や結論から話す
会話の冒頭で目的や結論を伝えると、相手の聞く準備も整いやすくなります。例えば、部下に指示を出すときには、「○○の件で確認したいことがある」と目的から話す、提案をする場合は、「私からは○○を提案したいと思います。その理由は……」と結論から話すと、聞く側も「その話題を考える」ために頭が使えます。
一方で、目的や結論が最初にないと「何を伝えたいのか」を理解するために頭を働かせなければなりません。そのため、相手の負担を軽減するためにも、目的や結論から話し始めましょう。
相手に合わせた話し方をする
自分たちの業種では当たり前とされている専門用語であっても、他業種の人には全く伝わらないことは少なくありません。そのため、相手に合わせて話す言葉や情報量を変えることが大切です。
また、話すスピードや声のトーン、表情なども相手に合わせることで安心感を与えることができます。こうした点に気を配り、先に信頼関係を築くことができればその後のコミュニケーションも取りやすくなるでしょう。
バックトラッキングを意識する
バックトラッキングとは、相手が話した言葉を同じように返すことで会話を進めていくスキルです。バックトラッキングを行うことで、相手から信頼感を得られ、スムーズに話を促していけます。同じ言葉を繰り返すだけでなく、相手が話した感情に寄り添ったり、内容を要約したりすると良いでしょう。
例えば部下から「あと一歩の所でプレゼンに負けてしまった」と話されたときには「悔しかったね」と気持ちに寄り添ったり、相談内容が長くなってきたときには「今のこの部分は○○ということで合っている?」と確認したりすると、コミュニケーションの質が高まりやすいでしょう。
「傾聴」を意識する
傾聴とは、心と体を傾けて相手の話を「聴く」ことです。傾聴は、カウンセリングの場でも基本とされている姿勢の1つであるほど、相手の気持ちを左右するコミュニケーション能力です。
実際に取り入れるときには、部下や交渉する相手の考え方がたとえ間違っていても、まずは否定せずに耳を傾けましょう。また、必要な所で相槌を打つことで、相手の話を真剣に受けとめていることを伝えることができます。相手の話を遮ることなく、しっかりと聞きましょう。
まとめ
コミュニケーション能力は、ビジネスシーンにも欠かせない能力です。特に、「話を聞く能力」「話をする能力」「相手と交渉できる能力」は重要です。目的や結論から話すことやバックトラッキングを用いるなど、コミュニケーション能力を高める方法も理解しておくと良いでしょう。
ただし、コミュニケーションの秘訣は相手に興味を持つことにあり、ノウハウや心理学の知識を知るだけでは信頼関係を作ることはできません。目の前の相手に真摯に向き合うことで、コミュニケーション能力を向上させていきましょう。