最近、ビジネスセミナーや心理学セミナーに参加し、突然、仕事をやめて転職・起業をして、お金・人間関係のトラブルに直面する人に出会います。そういう方から相談されて気づいたのは、「あなたは存在しているだけで価値がある」というニュアンスのメッセージを聞いたという共通点。
しかし実は「あなたは存在しているだけで価値がある」という考えは半分正しくて、半分間違っているのです。ここを理解していなければ行動したのはいいものの、仕事・お金・人間関係のトラブルが起きがちです。
その説明をすると「転職・起業する前にこの話を聞きたかった」と言われたので、トラブルが起きる原因と対策をみなさんにもシェアーします。
トラブルが起きる2つの原因
才能心理学の受講者にはよくする話なのですが、この種のトラブルが起きる原因は2つあります。
- 存在価値と機能価値の区別がついていないから
- 2種類の人間関係があることに気づいていないから
順を追って説明します。
存在価値とはBeing、あなたはいるだけで価値があるという考え方。つまり家族、恋人、友人など、プライベートな人間関係で生まれる価値です。
一方、機能価値はGiving、あなたが誰かに与えたものが、その人の役に立ち、感謝されて初めて生まれる価値。私たちがお金を払って何かを買うのは、「電車よりタクシーの方が速い」、「車より自転車に乗った方が健康になれる」など、その商品が何かの機能を提供してくれるから。これは初めて会った人やビジネスなど、社会的な人間関係の中で生まれる価値です。
問題が起きるのはこの2種類の価値と人間関係を混同してしまうからです。
人の成長プロセス 依存→自立→相互依存
生まれた時は誰もがBeing。親や周りの大人から存在しているだけで一方的に愛され、色々なものを与えてもらう。Giveされる依存の状態です。
その後、自分が誰かにGivingする。他者に何かを与える機能(能力)を身につけて、親のように与える側に立つのが自立の状態です。親やお世話になった人から与えられたものの大きさに気づいている人ほど、愛情や恩を感じるので、与える人になっていきます。
そしてGvingがうまくいくようになった時、あることに気づきます。それは受け取ってくれる人がいて初めてGivingできるのだということです。Givingしている状態が自分にとっての幸福で、それが自分のBeing(存在価値)だと気づいた時、Giving=Being(機能価値=存在価値)になります。これが相互依存という状態で、才能を発揮している状態です。
だから才能開花した人は与えずにはいられない。
マイケル・ジャクソンが「ファンが聴きたい歌を歌う」といい、できる経営者が「お客様が欲しい商品を作る」というのは、単なるビジネスやGive&Takeの話ではなく、相互依存の関係の中に自分の幸せがあり、それを実感しているからです。相互依存の関係の中に幸せがあるというのがポイントです。
そしてGivingが自然にできるようになった時、その人はBeing(存在)しているだけで、Givingできるようになっている。 Being(存在価値)とGiving(機能価値)が同時に起きるのは相互依存の段階に入るからです。
ここまでをまとめると「依存→自立→相互依存」という3ステップが人の成長プロセスで、人生はこの経験をするための場なのです。
「あなたはいるだけで価値がある」には2つの意味がある
冒頭の問題が起きるのは、「あなたはいるだけで価値がある」Beingは依存状態と相互依存状態の両方にあるからです。わかりやすく言えば、相互依存状態のBeingにいる時は「あなたはすごい! 素晴らしい! 羨ましい!」と言われ、一方、依存状態のBeingにいる時は「今のままでいいよ」「そのままでいいよ」と言われるような違いです。
相互依存状態で活躍している人を見ると大抵の人が憧れますが、そこに行けるのは自立のトレーニングを終えた人。まだ終えていない人がBeing(存在価値)に行こうとすると、依存状態のBeingに戻りがちです。
これが理解できていないと、自分では相互依存のBeingに行こうとしたつもりなのに、依存状態のBeingに戻っただけということもあります。家族や仲間内はそれでもOKなので、「あなたはいるだけで価値がある」と言ってくれます。
起業に置き換えれば、「きっと成功するよ」「君ならできるよ」「その商品、きっと欲しい人がいるよ」「応援するよ」という感じです。しかし、いざ社会に出ると「何できるの?」「実績は?」と言われてしまします。
そうならないためにまず必要なのは自立トレーニング(機能を身につける)が済んでいるかどうかのチェック。このトレーニングを自然にやってきた人もいれば、自然にはできなかった人もいます。その場合は、自立トレーニングが必要です。
「惜しまれる人材になってから、会社を辞めなさい」とよく言われますが、惜しまれるということは、会社の人から見ればあなたに機能価値がある証拠。それは自立トレーニング合格の証です。
あなたを知らない人(社会)から見ればあなたの価値はわかりません。あなたに価値があったとしても、知らないからわからない。初めて会った人やビジネスの世界では、「あなたがいてくれるだけでいい」と思えるだけの存在価値はまだ生まれていないからです。
それに気づかずに、依存状態の「あなたは存在しているだけで価値がある」で社会に出ると(就職・転職・起業など)、誰からも相手にされないという現実に直面することになります。
まとめ 相手の発言の前提をチェックしよう
「あなたは存在しているだけで価値がある」というメッセージは真実です。しかし、このメッセージを元に行動を起こし、幸せで豊かな人生を実現するには、
- 私たちがプライベートな人間関係と社会的な人間関係という2つの人間関係の世界を生きていること
- それぞれのルールが違うこと
この2つを押さえておくことが大切です。
存在価値と機能価値の違い、2種類の人間関係の違いを知らないためによく起きがちな問題の原因と対処法は伝わったでしょうか?
メディアや誰かから「あなたは存在しているだけで価値がある(または存在しているだけでは価値がない)」という話が出た時、
- プライベートな人間関係の観点から話をしているのか
- 社会的な人間関係の観点から話をしているのか
- 人の成長プロセスを踏まえた上で、相互依存の関係性で活躍できるといいですねという観点から話しているのか
前提をチェックした上で理解し、人生に役立ててください。