こんにちは、才能心理学協会・認定講師の澤田浩一です。
映画「さようなら」に出演したレオナ役のアンドロイド(人型ロボット)・ジェミノイドF。
彼女(ロボットですが)は、主人公ターニャに対して最初はロボットらしいプログラミングされた応答を、そして話が展開するにつれて人間的な感情をみごとに演じきっていました。
もちろん実際には最初から終わりまで事前に人によりプログラミングされたことなので、ジェミノイドFが感情を持ったわけではありません。
しかし観る者にそれをまったく感じさせない、一人の女優としてまさに「演じきっていた」と言える、そんな印象を観ていた私たちに与えていました。
このジェミノイドFを造ったのは、バラエティ番組「マツコとマツコ」に出演していた、あのマツコデラックスと瓜二つのアンドロイド・マツコロイドを造った石黒浩博士です。
石黒博士は小5のとき、大人から「人の気持ちを考えなさい」と言われてショックを受けたそうです。
それまでは自分がどう思ったか、どう感じたか、自分の気持ちを絵で表現したり、日記に書いたりしていたので自分の気持ちはわかるけれど、人の気持ちとは何なのか、理解できなかったそうです。
そして一番ショックだったのは、その問いを大人にしても、彼が納得するような答えを誰も答えられなかったこと。
彼は大人不信になり、「人」も「気持ち」も「考える」もどういうことなのかわからないのだから、「社会」が何かもわからない。だから社会には出て行けない、そんなふうに考えました。 一歩間違えれば引きこもりになっていたかもしれませんね。
でも博士はそうなりませんでした。彼は人口知能と出会い、そこからさらにアンドロイド研究にハマります。
それはモノゴトを客観的に分解し、設計するという、彼が好きな絵と同じやり方であったから。
アンドロイド研究を通して人の気持ちを考える、そしてそれは人間とは何かを研究することでもありました。
博士の「人間とは何か」を知りたい欲求は、アンドロイドの研究開発を通して、大学の中だけに収まらず、高齢者の在宅医療、教育、演劇、文化保存まで多岐の分野に及びます。
そして著書「アンドロイドは人間になれるか」(文春新書)で、人と仕事のあり方、技術の進歩と人との関係、社会のあり方にも博士は言及しています。
最初は「社会に出ていけない」というプライベートな研究から始まったことが、です。
才能心理学では、「自分は何をしたいのか」に始まり、そこから行動を起こすことで能力が磨かれ、才能と呼ばれるものになる、と定義付けています。
そしてそれは、最初は趣味や家族・友人などプライベートなことから始まりますが、才能が磨かれる中で、仕事や部署全体・会社全体へと、活躍するフィールドは拡がり、博士のように業界や国、世界にまで拡がっていくのだと思います。
これは博士だから、という特別なことではありません。
私の場合も「人をサポートしたい」という欲求から現在経営している会社での役割の見直し、そしてコンサルタントという仕事を通して会社から新しいフィールドへと向かっています。
みなさんは自分がしたいこと、価値があると思っていることをどのフィールドで現在されているでしょうか? 趣味や家族・友人の中で、でしょうか? あるいは働いている部署や会社で、でしょうか? それとも会社を超えて業界で、でしょうか?
あるいはもっと範囲が広く、コミュニティや国、あるいは博士のように世界のフィールドの中で活躍されているのかもしれません。
また次はどのフィールドに向かわれたいでしょうか?
もしかしたら、「今の自分で精一杯。考える余裕なんてない。」と思われるかもしれません。
でも一度想像してみてください。
「現在、自分はどのフィールドで自分のやりたいことをしているだろうか、そして現在のフィールドを飛び越えたら、自分はどんなふうになっているだろうか?」と。
そうすることで、さらに自分の才能を伸ばすヒントが得られるかもしれないと思います。