応用範囲の広い「ゲーム理論」は戦略的思考の心強い味方!

ビジネスにおいて、組織に戦略的優位をもたらすことが知られている「ゲーム理論」について解説します。「ゲーム理論」とは、両者が互いに影響し合って意思決定を行うことを解析する学問のこと。ビジネスリーダーはもちろん、企業の人事担当者など、人の動かす立場にある人はぜひ身につけておきたいセオリーのひとつです。なぜ「ゲーム理論」がビジネスに有効なのか、代表的なモデルを用いてお伝えします。

目次

ゲーム理論とは

Business woman in a suit plays chess. Close-up of a female hand on a pawn.

「ゲーム理論」とは、いくつかの主体(人・企業・国など)が関わる意思決定や行動におけるお互いの依存的状況のあり方をゲームに見立てて研究した学問のひとつです。経済学における企業経営や最適な戦略を、数学的なモデルを用いて分析するためのツールとして発展しました。「ゲーム理論」がビジネスの世界で有用な武器となる理由としては、クライアントや交渉相手の意図をくんで、両者がお互いにWin-Winな状況になるように動くことを前提として分析するためだと言われています。

経済学に用いる理論の名前に、なぜ「ゲーム」という単語が用いられたのか気になった人もいるのではないでしょうか。一般的に「ゲーム」と聞くと、「楽しい遊び」をイメージがありますよね。しかし英語のGAMEには、「試合」や「競技」、さらには「戦略」や「計画」という意味も含まれます。つまり、企業経営や最適な戦略を見つけることなども「ゲーム」のひとつなのです。

この「ゲーム理論」が世界中に知られるきっかけとなったのは、1944年にジョン・フォン・ノイマンとオスカー・モルゲンシュテルンの共著である『ゲームの理論と経済行動』が刊行されたこととされています。当時はまだ、経済学で数学を用いて分析することは主流ではありませんでした。なぜなら、数学は物理学や工学に適用されるものであって、いくつもの事象が絡み合う経済学や生物学などの解析には不向きとされていたからです。ところが、経済学者のモルゲンシュテルンは数学者であるノイマンの数学が経済学の解析に有用であると確信し、共同研究をはじめたそうです。

ゲーム理論の代表モデル「囚人のジレンマ」

相手がどのように出るのかを探り、互いに最適な戦略を立てる状況を探し当てるのが「ゲーム理論」ですが、その代表的なモデルとして「囚人のジレンマ」が有名です。

囚人のジレンマとは

これから、あるシチュエーションを紹介します。状況を整理しながら、読み進めてみてください。

共に罪を犯した2人の容疑者、容疑者Aと容疑者Bがいるとします。それぞれ別室に通され、意思疎通のできない状況で尋問を受けることになりました。2人の容疑者に与えられた選択肢は「自白する」or「自白しない」の2択。そして、2人がどちらの選択をするかによって以下のように刑の重さが変わると仮定します。

  • パターン1:容疑者A「自白する」かつ容疑者B「自白しない」→容疑者A:無罪・容疑者B:懲役10年
  • パターン2:容疑者A:「自白しない」かつ容疑者B「自白する」→容疑者A:懲役10年・容疑者B:無罪
  • パターン3:容疑者A「自白しない」かつ容疑者B「自白しない」→容疑者A:懲役2年・容疑者B:懲役2年
  • パターン4:容疑者A「自白する」かつ容疑者B「自白する」→容疑者A:懲役5年・容疑者B:懲役5年

このような状況下におかれた場合、それぞれの容疑者はどう考えるでしょうか。例えば、容疑者Aを主体とすると最も利益を得られるのは、無罪となる自分は自白して、相手は自白しないパターン1。しかし、もし容疑者Bも自白をしてしまうと、パターン4の互いに懲役5年となるリスクがあります。対して、お互いに自白をしないパターン3だと、懲役は最も短い2年という結果になるのです。

つまり、容疑者AとBが互いの利益を考え「自白をしない」を選択すれば、最も軽い刑で済みますが、自分の利益のみを追求し「自白をする」を選択すると、刑が3年長くなるリスクがあるというわけです。

このように自身にとって最適な選択をしたにも関わらず、相手の利益を考えた場合よりも悪い結果を招いてしまう状況。これを「囚人のジレンマ」と言います。この「囚人ジレンマ」への理解を深めるため、ここからは「ナッシュ均衡」と「パレート最適」にという2つの状態について解説していきます。

ナッシュ均衡

「ナッシュ均衡」とは、自分の選択を変えると利益が得られないことから、お互いに選択を変更する理由がなく安定した状態(均衡)である状態のこと。つまり、先ほどの「囚人のジレンマ」におけるナッシュ均衡は容疑者A・Bともに「自白する」(パターン4)こととなります。

パレート最適

「パレート最適」は、誰も不利益を被ることなく、その状況下で全体の利益が最も得られる状態のこと。言い換えると、より大きな利益を求めると誰かを犠牲にしなければならない状態を指します。「囚人のジレンマ」においては、お互いが自白せずに懲役2年の刑を受ける(パターン3)が「パレート最適」の状態と言えます。

つまり、自分にとっての合理的な(リスクの少ない)選択である「ナッシュ均衡」と、全体として最も利益が得られる「パレート最適」は必ずしも一致しないということがわかります。この矛盾を表しているのが「囚人のジレンマ」です。

なぜゲーム理論はビジネスに効果的なのか

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ビジネスにおける意思決定や交渉戦略には、「ナッシュ均衡」と「パレート最適」が一致しない「囚人のジレンマ」のようなものから、誰かが利益を得る構造になっているものまでさまざまなパターンが存在します。

しかし、いずれのケースにおいても自分の行動が他者に影響を与えたり、他者の考えを予測することで自分の行動が変わったりする点は共通しています。そのためビジネスのさまざまなシーンで「ゲーム理論」が効果的を発揮するのです。

行動するための洞察力獲得

ビジネスの世界では、日々さまざまなゲームが繰り広げられています。このゲームを勝ち抜くための洞察力獲得に「ゲーム理論」は有効です。他者の動きや考え方を把握し、その後の展開を予測し、行動に移すことで、より良い選択が可能になります。

組織文化を変容できる

会社組織を主体に考えると、競合他社と戦うゲームのプレイヤーです。しかし、その会社組織の中でも、さまざまなゲームが展開されています。具体的には、上司と部下、他部署との間、経営陣と株主の間などで繰り広げられているゲームのこと。そのため組織内に「ゲーム理論」を理解し、行動に移せるリーダーがいることで、従業員の士気向上はもちろん、クライアントとの関係性構築まで組織文化そのものを変容できる可能性を秘めています。

戦術的な思考が身につく

ビジネスにおけるゲームと言えば、価格決定や新商品の立ち上げなどが代表的なシーンとしてあげられます。これらのように極めて戦術的な思考を必要とする場合に、「ゲーム理論」が有用です。なぜなら「ゲーム理論」を用いることにより、競争相手の動きを事前に検討・予測し、より戦術的な策を練ることができるようになるからです。特に組織をけん引するリーダーが「ゲーム理論」を取り入れることで、組織に優位性をもたらすことが期待されます。

ゲーム理論を体験できる研修「赤黒ゲーム」

昔から、自己啓発セミナーでよく実施される赤黒ゲームという研修があります。詳しく書くとネタバレになるので詳細は割愛しますが、この赤黒ゲームはまさにゲーム理論、ナッシュ均衡、パレート最適を体験するのにうってつけです。

「記事を読んだだけではわかりにくかった」という場合は、赤黒ゲームというキーワードで検索してやってみてください。

まとめ

ビジネス戦略を立てる際の有用な手段として確立されている「ゲーム理論」について解説しました。特に人の上に立つチームリーダーがこの理論を効果的に活用すれば、組織としてより良い成果や選択につながる可能性も高まるでしょう。ただし、ビジネスで成功するためには経済学の知識やノウハウを知るだけでは意味がありません。理論を活用しつつ、自身の才能を見つけ、発揮できるポイントを知ることが重要です。

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この記事を書いた人

才能 プロファイラー/才能開発コンサルタント。
「クライアントを経済的・精神的に最も豊かにする才能開発」がモットー。
著書「才能が9割 3つの質問であなたは目覚める」、「自分の秘密 才能を自分で見つける方法」(経済界)

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