倒産させた経営者から二代目経営者が学ぶこと ~後編~

こんにちは! 才能心理学協会・認定講師の澤田浩一です。

前回に引き続き、元エルピーダメモリの社長・坂本幸雄氏を取り上げます。

坂本氏について、もうひとつ私たちが見るべきポイントがあります。
それはエルピーダが倒産してからの話です。

坂本氏は、エルピーダは世界のどの企業にも負けない技術力を持っており、DRAMでは他社に比べて市場が求める製品を他社に先駆けて供給できることが強みだと把握していました。

そしてこの強みを倒産で失うのは惜しいと考えます。

坂本氏はエルピーダの企業価値(強み)を残すために自ら管財人となり、再建に向けて奔走します。(前の経営者が自ら管財人となる会社更生をDIP型会社更生法というそうですが、たいていの上場企業は倒産すれば経営陣は退陣し、外部の弁護士が管財人となるので異例なことです。)

まず倒産による社内外の動揺を鎮めることに尽力しつつ、会社更生期間中も裁判所の許可を得ながら必要な技術開発投資を進めます。

また技術力を途絶えさせないために、①社員の雇用を守る、②生産ラインを止めず、維持するなど7項目からなる条件を決めて再建スポンサーを探します。

なぜなら社員の流失も、生産ラインを止めることも技術力の喪失につながるからです。

結果、再建の条件を最大限満たす、アメリカのメーカー、マイクロン・テクノロジの傘下に入り、エルピーダは更生を果たします。

ここで二代目が学ぶべき二つ目のポイントは、会社は「公器」だということです。

会社が社会の中で存在できるのは、社会の中で果たすべき役割があるから。
エルピーダで言えば、IT化が進むなかで市場が求める価値あるDRAMを供給していくことが、それに当たります。

創業者は自分のやりたいことがあったから会社を立ち上げ、それを生業としています。そしてそれが世の中のニーズに合えば、会社は発展していきます。

しかし二代目の役割は創業者が生業として起こした事業を社会に根付かせること。
つまり創業者のように自分がやりたいことを満たすためだけにあるのではなく、二代目にとっては、会社は市場のニーズに応える器、公のために存在している、ということです。それが公器という意味です。

そしてそのことを踏まえた上で自分の持ち味を活かしていく、このことが二代目には大事ではないかと思います。

坂本氏は、会社は公器であると認識されていたからこそ、倒産後もエルピーダの技術力を世に残そうとされたのではないでしょうか?

経営は水もののところがあります。尽力を尽くしたとしても企業を取り巻く環境で力及ばず、ということもあるかもしれません。

例えそのようなことになったとしても、社会に対して何が残せるか、それは会社の持つ技術力かもしれないし、会社の理念・価値観を背負ってくれる人かも知れない。

二代目は最悪の形になったとしても会社として何が残せるかを常に考える必要があるのではないかと思うのです。

坂本氏はエルピーダの技術力を世に残し、また管財人を退任された後も倒産という失敗で得た教訓を世に伝えようと活動を続けられています。それが未だに世間で注目を浴びている理由のように思います。

わたしの場合は、もし最後まで残すべきものがあるとすれば、それは自ずから考え、判断し世の中に貢献していくことのできる人財だと思っています。
残りの人生で、そういう人たちを一人でも多く輩出していきたい、そのように思う今日この頃です。

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この記事を書いた人

精神科ソーシャルワーカーを経て、経理・総務・人事等の業務に従事後、2001年より計測器メーカー㈱サワダ製作所を経営、中小企業経営者のパートナーとして才能心理学、TOC、NLPを使った組織作り支援を展開。

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