こんにちは、才能心理学協会・認定講師の澤田です。
国内首位の売上高を誇るトヨタ自動車。
そのトヨタ自動車の豊田社長が助言を求める経営者がいるそうです。
伊那食品工業株式会社の塚越寛会長。
伊那食品工業は、長野県の広域農道沿いにある、海藻から寒天製品を製造する中小企業です。
1958年の会社設立から48年間連続の増収・増員・増益を達成し、一貫した業績に関する見識を求めて、トヨタの経営幹部以外にも多くの経済実業界のリーダーが伊那食品工業の本社を訪れています。
ところで、経営者には大きく分けて2種類のタイプがあります。
ひとつは日々大きな変化を求める経営者。例を挙げればアップルのスティーブ・ジョブスがこのタイプです。
AppleⅠから始まって、おなじみのiPod、iPhone、iPadなど革新的な製品を次から次へと市場に投入させ、会社を大きく発展させました。
彼のような経営者は同じところに居座らない。革新的で劇的な変化が大好きで、絶えず大きな変化を求めます。
もうひとつのタイプは少しずつ牛歩のように歩みを進める経営者。時間をかけてゆっくりと進展していくことを好みます。
伊那食品工業の塚越会長は後者のタイプ。
塚越会長は、5人兄弟で8歳の終戦の年に父を亡くし、小学生のときはお母さんを助けて家事を切り盛り、なんとか中学を卒業して高校へ進学しますが、過労と栄養失調で肺結核を患い、3年間の療養生活を余儀なくされます。
療養後、木材会社に就職、そこから社長命令で経営危機にあった伊那食品工業に社長代理として移ります。生産設備らしい設備もなく、社員もわずか十数名の会社です。
彼は、経営難の会社を永続させたいという一念で経営に邁進し、その後、社員の幸せと会社の永続のバランスを取ることが大切だと考えます。
会社の数字だけにこだわらず、社員はもちろん、仕入先からも売り先からも、そして地域の人たちからも「(伊那食品工業は)いい会社だね」と言ってもらえるように、そして前年よりも確実に成長していくという経営を心掛けました。
塚越会長は、それを木が年輪を積み重ねていくような経営という意味で「年輪経営」と呼んでいます。
そのような経営姿勢が、48年間増収・増員・増益を生みました。
塚越会長が肺結核のために病室で安静にしているときに思ったのは、外を歩いている人を窓から眺めて「歩けていいなあ」とうらやましく思ったこと。
「うらやましい」という感情から出てきた欲求は、「安心したい」「安定したい」という欲求。
その欲求が、経営に邁進していく中で、社員の幸せと会社永続のバランスという考えを生み、「年輪経営」という経営者としての能力を生み出したのではないかと思います。
先述の二つのタイプ、どちらが良いとか、悪いとかはありません。
みなさんは、絶えず変革を求める変革重視型でしょうか? それとも時間をかけて進展していくことを望む進展重視型でしょうか?
どちらのタイプかはみなさんがどのような経験をし、そのときどのような感情を強くもったかに依ってきます。