こんにちは! 才能心理学協会・認定講師で二代目経営者の澤田浩一です。
前回のブログで取り上げた靴下のトップブランドのタビオ。
タビオは女性用靴下に特化して商品開発を行い、小売店の「靴下屋」をフランチャイズチェーン展開することで成長してきました。
タビオの強みは「売れる商品だけを売れるだけ作る」という仕組みにあります。
アパレルや日用品、雑貨の世界では多くの種類の商品があるのが普通です。しかも色違いやサイズの種類などを合せると膨大なアイテム数になります。
さらに流行や気候などの季節変動もあり、売れ筋商品が時期や地域によりめざましく変わるのが特徴です。
そのため多くの企業は過去実績に基づいて年間の販売予測を立て、その予測に基づいて生産を行ったり、メーカーへの発注を行ったりします。
しかし予測はあくまでも予測にしかすぎません。必ずしも当たるというものではなく、売れ筋商品の品切れや、また逆に売れ残って在庫が余ってしまうということが発生します。
売れる商品だけを品切れを起こさず、また在庫が多く余らず売るためにはどうすれば良いかが企業の至上命題となるのです。
タビオの越智直正会長は1970年代からいち早くこの問題に取り組み、協力工場から自社の小売店までを独自の生産販売システムでつなぐことで「売れる商品を売れるだけ作る」ことを実現しました。
このように工場から消費者に届ける小売店までの流れを最適に効率よく流す仕組みをSCM、サプライチェーン・マネジメントと言いますが、タビオは独自にSCMをつくりあげて靴下のトップブランドになったと言えるでしょう。
ここまではSCMの教科書にも載っていそうな話なのですが、越智会長の「靴下バカ一代 奇天烈経営者の人生訓」(日経BP社)を読んで私がハッとしたのが、
「どんな立派なシステムがあっても、そこに関わる人が同じ目的意識を共有し、その目的の達成に情熱を傾けない限り、決してうまく機能しません。当たり前のことですが、これに気づく人は以外に少ない。」
ということ。
確かに工場の、特に現場の考え方と、最前線にいる小売店の人たちの商品への考え方は違います。
工場はコストを下げるためにできるだけ多くの量を一度に生産したいもの、逆に小売店では売れるごとにその分だけ仕入をしたいもの。
大量に作るか、その都度作るかは真逆の考え方です。
だからこそサプライチェーンを組むときは、真逆の対立する考え方を解消しなくてはいけません。
それには越智会長の言うように同じ目的意識が必要です。
工場、小売店のそれぞれの人、一人一人が仕事で才能を発揮する働き方をするためには、自分がどのようなことに心が動くかを知っていることが大切です。才能心理学ではそれをコア・コンセプトと呼んでいます。
そして会社という組織で活動するためには、自分の心が動くこと、つまりしたいことだけでは成り立ちません。どのように他の人の役に立つのか、社会の役に立つのかという視点が必要になります。
どのように周りの人や社会の役に立つのかを会社として世間にコミットメントしたものが経営理念と呼ばれるものです。 言わば経営理念は会社のコア・コンセプトです。
社員が経営理念に共感し行動に移すことができれば、それは会社のパワーになり企業価値を高めることになります。
それは自分のコア・コンセプトが会社のコア・コンセプトにどこまで共鳴できるかということにかかってきます。
SCMの場合はさらに会社を超えて、企業間同志で目的意識、理念の共有が必要になります。
タビオの場合は「最高の靴下を最適な価格でお客様に届けたい」ということ。
SCMの構築にあたり、協力工場など仕入先の説得に2年間説得したと越智会長は言います。
仕入先が越智会長の「最高の靴下を最適な価格で届けたい」という理念に共鳴したからこそシステム実現が成功しました。それはそれぞれの仕入先の経営理念、コア・コンセプトがサプライチェーンの理念に共鳴するところがどこかあったからでしょう。
越智会長は、タビオのサプライチェーンを同じ志を持った人の集まりという意味で「サムライチェーン」と呼んでいます。
SCMの成功は、会社のコア・コンセプトがSCMのコア・コンセプトに共鳴すること、さらにそこで働く人たちのコア・コンセプトが会社やサプライチェーンのコア・コンセプトに共鳴することだと私は思うのです。