こんにちは! 才能心理学協会・認定講師で二代目経営者コーチの澤田浩一です。
前回のブログではネット社会でさまざまな価値観が生まれる、この時代に相応しい経営のあり方についてお話させていただきました。
それはトップが示した方向性やビジョンについて社員が共有し、それぞれの役割と責任の下で自由に仕事ができる環境を作っていくことです。
そして経営者目線で考え、仕事ができる社員を育てるコツは「口にチャック」することだということもお話させていただきました。
しかし、もし方向性やビジョンについて社員が共有できないまま「口にチャック」していたとしたらどうなるでしょうか?
方向性やビジョンについて共有できないまま「口にチャック」したことで失敗した企業があります。
インターネット接続サービスのアメリカ企業AOLです。
1958年、ハワイ生まれのAOL元CEO、スティーブ・ケース氏は子どもの頃からビジネスのアイデアを考えるのが好きでした。
そして13か月しか違わない兄はそういう弟を手助けして弟のアイデアを形にしていくのが好きだったそうです。
ケース氏はわずか10歳のときに最初のビジネスをスタートさせ、スイスの時計メーカーのハワイでの独占販売代理店になったり、グリーティング・カードを売っています。
そういう彼が影響を受けた本が未来学者アルビン・トフラー氏の「第三の波」。
その本は電子通信でつながった社会、すなわち現在のインターネット社会の到来を予言した本でした。
インターネット事業に関心を持った彼はオンライン電子ゲーム事業に参入、1983年にAOLを立ち上げます。
1992年には株式公開を果たし、競合であるマイクロソフト社のMSNを押しのけ会員数は2200万人になり、1999年にはインターネット関連株の高騰も手伝い、時価総額1630億ドルにまで成長します。
その絶頂期に彼は巨大メディア、タイム・ワーナーの買収を行います。
インターネット株の高騰がいつまでも続くものではないと予想した彼は事業基盤を強固なものにするために多角化を行おうとしたのです。
タイム・ワーナーを買収先に選んだのは、インターネット事業を今後展開する上でコンテンツがこれから重要性を持つこと、また当時どこも行っていなかったケーブルテレビへのインターネット接続を行い、会員数をさらに増やすことでした。
しかしこの買収は987億ドルもの損失を出し、失敗に終わります。
失敗した理由のひとつは当時のタイム・ワーナー内部にインターネット事業の将来性に対し疑問を抱いていた最高幹部が複数人いたこと、伝統的なメディア産業と新興のインターネット企業との文化的な違いが大きすぎたこと、さらにCEOであるケース氏自身もタイム・ワーナーの事業に対して実行力がなく、自ら口をはさまないようにしたことでした。
アイデアは浮かんでも、それを実行に移す力がなければ、絵にかいた餅になります。
もし彼が子ども時代に行ったビジネスのように彼のアイデアを理解し、実行に移してくれる兄のような人物がタイム・ワーナー側にいたらと思います。
きっとインターネット株のバブル崩壊があっても失敗はしなかったのではないでしょうか?
残念ながらAOLはその後タイム・ワーナーの一部門となり、昨年ベライゾンが買収したYahoo!に統合され、Oathという会社になりました。
部下の行いに「口にチャックする」とは部下とコミュニケーションを取り、目指すべきビジョンを共有化しながら部下を信頼し、見守るということです。
そのため二代目経営者はビジョンを共有できる部下を作ることが重要になります。
ではどのようにすればビジョンを共有できる部下を見つけることができるようになるのか?
それは次の質問に答えることで見えてきます。
1.あなたの強みと思う能力は何でしょうか?
マーケティングや営業力でしょうか、アイデアや企画を考える力でしょうか、さまざまな工夫をこらし、他社にない製品を造ることでしょうか、それとも堅実に利益を増やし、会社を運営する財務能力でしょうか?
2.あなたが弱いと思っている能力は何でしょうか?
3.そしてその能力を補うために、どのような部下に補佐してもらえば良いでしょうか?
あるいはどのようなパートナーと組めば良いでしょうか?
この人ならと思う人が見つかったなら、みなさんのやりたいことやビジョンを伝え、協力してもらいましょう。
そして任せていくことが二代目経営者成功のための一歩です。