こんにちは、才能心理学協会・認定講師の澤田浩一です。
私は才能心理学協会の認定講師の他に、ファミリービジネスの中小製造業を経営する二代目経営者です。
今年に入り、私たちの会社の経営理念を見直しました。
なぜ経営理念を見直したのか? 今日はその話をしたいと思います。
二代目ということは、当然、会社には親(先代)が立てた経営理念があります。
二代目が事業を引き継いだ場合、経営理念をどうするかについては二つのパターンがあります。
ひとつは経営理念をそのまま引き継ぐ場合。
この場合、先代である親(多くは父親)がこの会社で何をしたかったのか、その思い(理念)を後継者が充分理解しており、かつ、その理念を自分も引き継ぎたいと思っているケースです。
もうひとつは経営理念を見直すケース。
この場合は、事業を継続する上で経営理念は重要なものだと認識しており、かつ、自分の事業への思い(理念)を前面に打ち出したいと考えている。あるいは先代である親の理念に、さらに自分の思いを付け加えたいと考えているケースです。
このケースの場合、経営理念を見直すためには、先代である親や周囲(株主や社内の古参の幹部)からの理解を得られることが前提です。そうでなければ反発を喰らうでしょうし、そうなれば事業運営に支障をきたすでしょう。
私の場合、後者のケースなのですが、経営理念を見直したのは、代替わりが完全に終わった時期(父も古参の幹部もすでに引退した後)だったので、周りの反発もなく行えました。
しかも2度、見直しています。
私が先代である父から事業を引き継いだのは2001年のことです。それまでは他社に勤めていたので、引き継ぐ予定は当初ありませんでした。
父が高齢であったことと身体的な事情もあり、最終的に私が勤めていた会社を退職して継ぐことになったのですが、入ると同時に父は実質引退、経営に関しての引き継ぎはほとんどありません。
ただ父の性格は息子としてわかりますし、働く後ろ姿の記憶もありますので、何となくこういうふうに考えているだろうな、というのはありました。
当時の先代が作った経営理念は、実はある取引先の経営理念と一緒です。現在、その取引先も代替わりされていますが、先代同志、仲が良かったのだと思います。きっと取引先の先代の理念に共感し、「自社にも」と、採用したのでしょう。
私が父から引き継ぎらしい引き継ぎも受けずにやってこれたのは、父が作り上げたビジネスモデルの安定性と、父からの代の経営幹部の方の支えがあったからです。
ただ市場は縮小傾向にあったので危機感は持っていました。父の三回忌も終わり、古参の幹部の方の引退もあって、2007年に1度目の経営理念の見直しを行いました。
このときは新しい組織でやっていくんだ、という思いを込めて作りました。
そして新しい経営幹部が育ってきたのを機に、より外(市場)に出て行こうという意味合いを込めて、今回の見直しを行っています。
2度の見直しを行ったのは、こういう経緯ですが、父ならこういうふうに考えて経営を行っているんだろうな、というのは時々考えます。
結局、1度目に見直した経営理念も今回の経営理念の見直しも、父から引き継いだ思い(理念)もどこかに入っているのだと改めて思います。
これが私の経営理念に関する経験ですが、その経験を踏まえて思うのは、経営理念を見直す場合、後継者は先代の理念がどういうものであったのかを理解しておくこと、その上で後継者としての自分がこれからしたいことを明確にすることだと思います。
先代の理念を無視して、自分の理念だけで事業を行っても、周囲から反発を喰らい、激しい摩擦を生むだけです。それでも成長できるという算段があれば良いのですが、そうでなければ、かなりリスクがあることではないでしょうか。
先代の経営理念を理解することは自分の親を理解することでもあります。経営理念を考えることは親を理解する絶好の機会だと言えます。
また経営理念を見直すことは自分の人生経験を振り返り、これから何をしていきたいのかを見つめ直すこと。自分自身を理解するということです。
これらのことは経営理念をそのまま引き継ぐ場合も一度やってみることをお勧めします。先代が作った経営理念への理解がより深まり、自分のこともよりわかるようになるからです。
そして私の場合、父との会話の時間が少なかったので充分には出来ませんでしたが、是非、折をみて先代と話す機会をできるだけ設けてみてください。形式ばったものである必要はありません。
むしろ父と子の対話として、自分がしたいことをはっきりと伝え、100%でなくても理解してもらうことが大事だと思います。
先代や周囲の理解を得て事業を進めていくことが、二代目である皆さんの才能を開花させることになるのではないでしょうか。