「自分を変えたい」という気持ちはあるのに、どうしていいのかわからず、やみくもに新しいことに挑戦したり、全く別のフィールドに飛び込んだりして、結局挫折してしまった…というのはよくある話。では、自分を変えるためにはいったいどうすればよいのでしょうか?それは「自己認識力」を高めること。「自己認識力」は、自分を変えるために必要不可欠なだけでなく、マネジメントの分野においても有効なスキルです。この記事では、才能開発の専門家が「自己認識力」について解説していきます。
自分を変えるために必要なのは「自己認識力」
自分自身をポジティブな意味で「変える」のには、「成長」と「変容」の2パターンあります。
「成長」は自分自身で「こんな風になりたい」と目標を立てて、それに向かって変わっていくこと。ビジネスにおいては以下のような例が挙げられます。
- 今まで自分本位で仕事を進めていた社員が、クライアントの視点から仕事を捉えるようになった
- プレゼンのアシスタントを続けていた社員が、経験を積んで大きなプレゼンを任せられるまでになった
簡単に言うと、「できなかったことができるようになる」こと「人格が磨かれること」が成長です。皆さんも、イメージしやすいのではないでしょうか。
一方「変容」は、大きな価値観の変化であり、かつ本質的な内面の変化です。例を挙げると以下の通りです。
- 長年勤めていた会社を退職して、起業する
- 都会で順風満帆に働いていたが、安定した年収や社会的地位を捨て、故郷にIターンする
このように、生き方を180度変えてしまうと言っても過言ではない大きな変化が「変容」であり、だからこそ、一歩を踏み出せずにいる…という人も少なくありません。
しかし、今私たちは時代の転換期の真っただ中にいます。日々環境が目まぐるしく変わっているのに、「変化すること」を恐れて立ち止まってしまうと、時代に取り残されてしまいます。
これからの人生をより心豊かに、幸せに暮らすには、主体的に「変容」を遂げるスキル、つまり、「自分を変える力」が必要となるのです。そのために身につけなければいけないのが「自己認識力」です。
「自己認識力」とは
自己認識力とは、自分自身のことを客観的に分析して、理解する力のことです。自己認識力を身につけることによって、人は、「自分の軸となるもの」や「人生の価値観」を知ることができます。そして、自分の人生に不必要なものを手放す勇気が得られるのです。
また、自己認識力は、マネジメント分野において、最重要なスキルである、と位置付けられています。自分を正しく理解しているリーダーは、仕事のパフォーマンスはもちろん、コミュニケーション能力、判断力、部下との関係などが優れている、とも言われているのです。
自分を変えるために必要不可欠な自己認識力には「外面的自己認識」と「内面的自己認識」の2種類あります。それぞれ詳しく解説しましょう。
外面的自己認識
外面的自己認識は、自身の内面的な部分を他人がどのように評価しているかを認識することを指します。
例えば、「自分は部下に好かれているに違いない」と認識していて、実際に部下が上司に尊敬の念を抱いている場合、外面的自己認識力が高い、ということです。反対に、実は部下は苦手意識を抱いていた…という場合は、残念ながら自己認識力が低いということになります。
つまり、周囲が自分のことをどのように思っているかを正確に把握することが「外面的自己認識力を高める」ということです。
内面的自己認識
内面的自己認識とは、自分自身の内面を明確に捉えて、かつ理解することです。内面の要素は、具体的には以下のようになります
〇自分の価値観
〇他者への影響力
〇環境への適合
〇情熱・願望
〇思考・弱み・強み・感情・態度といった反応
内面的自己認識が高いかどうかは、以下の問いに対して、どのくらい明確に回答できるかによって推察することができます。
〇「自分が人生において大切にしたいことは何か」
〇「自分の言動が、まわりにどのような影響を与えているのか」
〇「自分が傷つけられると嫌なものは何か」
〇「自分が怒りをおぼえるのはどんなときか」
〇「自分の強みは?あるいは弱みは?」
〇「自分が特に情熱を感じることは何か」
才能プロファイリングを使えば、自分の価値観、情熱・願望、思考・弱み・強み・感情を明確に理解することができます。
自分を変える自己認識力を高める具体的方法
自分を変えるためには自己認識力を高めることが必要だ、ということがわかれば、次は「自己認識力をどう高めるか」を知ることが必要です。ここでは、自己認識力高めるための代表的な方法を、いくつかピックアップしてご紹介しましょう。
他の人からフィードバックをもらう
外面的自己認識力を高めるために効果的なのが、他者からフィードバックをもらうことです。このとき、なるべく率直で厳しいフィードバックをもらえるように工夫しましょう。
リーダーの権力が強くなればなるほど、率直な意見をくれる人は少なくなります。しかし、それでは他者の視点を取り入れる機会がどんどん減少してしまい、結果、外面的自己認識力は低下してしまうのです。それを避けるためにも、普段から、傾聴力を高めたり、相手の意見を頭ごなしに否定したりしないように気を付けなければなりません。
もし、周囲に忌憚のない意見を言ってくれる人がみつからないのであれば、メンターについてもらったり、コーチを雇ったりするのもひとつの方法です。
ジャーナリングの活用
内面的自己認識力を高めるのに効果的なのが「ジャーナリング」です。ジャーナリングとは、別名「書く瞑想」と呼ばれています。進め方の一例は以下の通りです。
- 紙とペンを用意して、タイムを決める
- 深く呼吸する
- 頭に浮かんだことを、ひたすら無心で書き続ける
「これは文字にしないでおこう」という無意識下の思考の制約を外すことで「私はこんなことを考えていたのか!」「こんな気持ちだったのか!」と本当の考えや気持ちに気づくことができます。これがジャーナリングの醍醐味です。コツは、頭に浮かんだことを何も考えずに書きだすこと。頭に浮かんだことを可視化することで、自分の思考が客観的に認識できます。
なかなか思い浮かべるのが難しい…という人は、前述した「内面的自己認識」の要素の中からテーマをピックアップしてジャーナリングしてもよいでしょう。
マインドフルネス瞑想の実施
もうひとつ、内面的自己認識力を高める方法が、マインドフルネス瞑想の実施です。マインドフルネス瞑想とは「今ある身体的状況」「今、この瞬間の気持ち」を正確に把握する力を養うための瞑想法です。
実践方法はいたってシンプルで、姿勢を正して自分の呼吸に意識を向け続けるだけ。余計な思考が浮かんできたときは、その思考を優しく手放してあげます。これを繰り返すことで、徐々に自分の今の状態に気づく力が高まるでしょう。
普段の生活の中で、自分の些細な状態の変化に気づくことができるようになれば、そこから内省を深めていくこともできるのです。
「なぜ」ではなく「何」から始まる問いかけで内省する
マインドフルネス瞑想で、内省できるようになった際は、「なぜ」ではなく「何」で内省することも重要です。「何」で始まる内省は「なぜ」で始まる内省よりも、客観的に答えを導き出すことができるのです。
例えば、仕事が大詰めのときに、普段は気にならない部下のほんの少しの私語が気になって注意してしまった、とします。
これを「なぜ」で内省すると、「なぜ自分は注意してしまったんだろう?」となりますね。その答えはおそらく「部下との関係がうまくいっていないのかもしれない」「自分が器の小さい人間だからかもしれない」などとなるでしょう。つまり原因が「自分」や「部下との関係」など、「人間」に帰着してしまうのです。
これを「自分に余裕がない原因は何だろう」「何を改善することで、繰り返さずにすませるだろう」と、「何」を使って内省します。
すると、「もう少し仕事の割り振りを効率的にすればよいのではないか」「余裕がなくイライラしているな、と感じたときは、一旦席を外してリフレッシュするのも必要なのではないか」など、建設的かつ客観的な答えが出るはずです。 このように「何」で内省することで、さらに効果的に「内面的自己認識力」を高めることができるようになるのです。
まとめ
自分を変えるために必要な「自己認識力」。ただその知識を身につけて終わりでは、決して変容を遂げることはできません。大切なのは、日々の生活の中でどのように実践していくかということです。この機会にぜひ自己認識力を高めて、自分を変える第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。