こんにちは! 才能心理学協会・認定講師で二代目経営者コーチの澤田浩一です。
前回に引き続き、今回も「目標」について取り上げたいと思います。
みなさんの会社では目標はどのように決めていますか?
みなさんの会社が中小企業なら、大まかには次の二つに分けられるのではないかと思います。
ひとつは社長が「何を」「いつまでに」「誰が」やるかをすべて決め、社員に指示するやり方です。
この方法は軍隊で行われているやり方と同じで、指揮官が「あの道から山の山頂を目指せ!」と号令をかけると、一斉にみんなが山に登ります。
具体的なやり方まで決まっているのでスピード感があり、社員は迷うことはありません。
会社を創業したてのときによく見られる方法です。
ただし社長が登る山を間違えたり、辿るルートを間違えたりすると業績が落ち、社員がついてこなくなります。
もうひとつは社長が目標について大まかな方針を打ち出し、「誰が」「何を」「いつまでに」やるかについて社員が決めるやり方です。
この方法だと社員が具体的な目標を自分で考えるので、目標の実行に対しても責任感が生じ、モチベーションも高まります。
ただしこの場合、方針について社長の意図を社員がきちんと理解していることが大切な鍵となります。
例えば社長が「お客様の満足度を高める」という方針を打ち出したとしましょう。
社長が言う「お客様の満足度」とは具体的には何を指すのでしょうか?
お客様アンケートの調査結果でしょうか?
あるいは掛かってくるクレームの電話の数を減らすことでしょうか?
この方法を取る場合、経営的な観点から社長の意図が理解できるよう、社員を育てていく必要があります。
創業当時から社員が経営的な観点からものごとを見ることができるように社員を育ててきた会社があります。
江副浩正氏が創業したリクルートです。
江副氏は生まれてすぐに母親と生き別れ、複雑な環境で育ちました。
そして小学校のときに先生から勧められて中高一貫の私立学校に進みますが、家にお金がなかったため同級生と遊ぶことができず、それがコンプレックスとなって何をしてもダメ人間だと自分で感じていたそうです。
そんな彼の人生が変わったのは東大に進学し、そこで生活費を稼ぐためにアルバイトで入った東京大学新聞会でした。
学生向けの新聞に企業から求人広告を載せてもらうことで収入を増やしました。そして生活に余裕ができた頃、彼が考えたのは、自分の複雑な生い立ちや貧しさからくる悔しさが自分の人格形成にどのような影響を及ぼしたのかということ。
そのことを知るために江副氏は心理学を勉強しますが、そこで出会った言葉が「人は人格を変えることができる」という心理学者カール・ロジャースの言葉。
その言葉に衝撃を受けた彼は人との関わりが少なかった生活を変え、ダンスやオペラのレコードを聴き始めるなど社交的な生活を始めます。
そして卒業後も就職せず、人材募集をしたい企業から広告料を取り、学生向けに企業案内を配布する事業を立ち上げます。
それが現在のリクルートです。
江副氏は「自ら機会を創り出し機会によって自らを変えよ」という経営理念の下、優秀な人材を採用、実績がなくても権限を委譲してどんどん仕事をさせていきました。
社員持ち株会や新規事業の提案制度を作り、会社の中に小さな会社を作り上げ、経営者のように小さなグループで収益を管理する仕組みを作っていったのです。
残念ながらその後、リクルート事件で江副氏はトップを辞任、リクルートは一時ダイエーの参加に入りますが、江副氏の社員経営主義の理念は引き継がれ、社員の新規事業提案からホットペッパーや結婚情報誌のゼクシィ、R25、受験サプリなどが生まれてきています。
その後も社員一人一人が経営者目線で考え、目標を立てたからこそリクルートは成功したのだと思います。
私の会社では、3人の部門長が目標についての方針を合議で話し合って決め、それに基づいて各リーダーが目標を立てて実行しています。
もちろん最初からこのようになったわけではありません。
目標の立て方から教え、権限を委譲して自由に仕事ができるようにすることで、次第に経営者目線での目標が立てられるようにレベルアップしてきたのです。
おかげで昨年はわずかですが売上記録を更新することができました。
私の現在の役割は3人の部門長が行き詰った困ったときの相談と、月1回のコーチングです。
多くの中小企業が現在、人材不足と後継者不足の悩みを抱えています。
経営者目線の社員を育てることはこういった問題の解決策にもなると思います。
なぜなら一人一人の生産性が上がり、多様なアイデアが社員から生まれてくるからです。
私はコーチングを通して経営者目線を持つ社員育成のお手伝いができればと思っています。