こんにちは! 才能心理学協会・認定講師で二代目経営者コーチの澤田浩一です。
去る4月1日にローランドの創業者、梯郁太郎(かけはし いくたろう)氏が逝去されました。
梯氏は国内で早くから電子楽器を手掛け、彼が製作したTR-808などのリズムマシンはヒップポップの誕生やポップミュージック、EDMに影響を与えました。
(ピコ太郎のPPAPのバックに流れる音もTR-808が使われているそうです。)
また電子音楽のデータをデジタル転送するための共通規格「MIDI」の策定で中心的な役割を果たし、その功績でグラミー賞を受賞されています。
私は楽器のことはとんとわからないのですが、カラオケマシンはMIDI音源で出来ているとのこと。また携帯電話の着信音にも使われていたそうなので、普段からお世話になっていたことになります。
梯氏は私たちの生活に大きな影響を与えたイノベーターだと言えるでしょう。
梯氏が電子楽器の道に入ったきっかけは戦中に統制されていた音楽が戦後大量に世の中に入ってきたこと。
当時音楽を聴く唯一の道具であったラジオの修理から始まり、バロック音楽を聴いたときのあこがれからオルガンを自分で作りたいと思います。
そしてそれが電気店で得た経験や知識から電子回路でオルガンを作ることへ、後にエース電子工業やローランドでの電子楽器の製造へとつながります。
二代目経営者は引き継いだ会社をいかに次の世代に引き継ぐかということに心を砕く人が多いのですが、創業者の場合は梯氏のようにイノベーターの人が多いと思います。
イノベーターの役割は世の中のあるものを改良するのではなく、ないものを世の中に提供したり、紹介したりすること。
私は梯氏の著書「サンプルのない時代」(音楽之友社)の中でイノベーターになるための才能の3つのポイントを学びました。
梯氏は著書の中で、電気メーカーには電子技術はあるが、楽器に必要な音楽のノウハウがなく、逆に従来の楽器メーカーには電子技術をマスターする基礎技術が電気メーカーとは違いすぎるので、そこにニッチ市場としての電子楽器のポジションを見出したと言います。
これは世の中にあるものとあるものを組み合わせて、今までにない、あるいは未成熟な市場を見つけることがイノベーターとして必要な才能であるということです。
また梯氏のやり方はミュージシャンからどのような楽器が欲しいかを聴くことはしません。
ミュージシャンとの会話の中で、これまでにない製品を生み出し、それをミュージシャンに問いかけることを繰り返しています。
そしてそのときのポイントは、初めての分野の商品は手応えが得られるまで数年、時には10年以上かかる場合もあるので、その見極めが成功・不成功の分かれ道になると言います。
そして3つ目のポイント。
それは「成功するまで続ければ、必ず成功する」という話をスタッフに梯氏はいつもしているということです。
「開発を続けていく根気よりも、プロジェクトを構成するスタッフがどれだけ信じて取り組んでくれるかにすべてがかかっている」と梯氏は言います。
トップがビジョンを示し、ベクトルを合わせることが大事だということです。
二代目経営者は次世代に会社をつなぐという役割を持っているので、この三つ目の才能はあるはずです。
これからの日本は人生100年時代という、まさに「サンプルのない時代」に突入します。
イノベーターから他の二つの才能を学ぶことがこれからは必要になるのではないでしょうか?
梯氏はローランドの経営陣と対立し、ローランドを辞めて85歳でATVという会社を設立しました。
そしてaD5というリズムマシンやaFrameという電子パーカッションを市場で発表されています。
aFrame デモ
https://www.youtube.com/watch?v=RgXpA_59vQY
梯氏は最後までイノベーターとしての生き方を貫かれたのだと思いました。