キャリアや年齢を重ねるにつれ、必要となるスキルの一つに「マネジメント能力」があります。自分自身の業務をしっかりと遂行しつつ、部下をマネジメントできる人材は会社から高く評価されます。
この記事では、マネジメント能力を身に付け、かつ高める方法や、心理学を応用して部下をマネジメントする方法について、具体例を交えてご紹介します。
マネジメント能力とは
マネジメント能力とは、端的に言うと「管理能力」のことです。ビジネスにおけるマネジメント能力とは、運営や経営を円滑に進めていき、組織を統一することでプロジェクトを効率よく動かしていくために必要なスキルです。社員を統率して動かすことで目標達成を目指す、という点においてはリーダーシップと類似しています。しかし、マネジメント能力は、組織内の人材にフォーカスするだけでなく、予算・時間・資金など人以外の資源もトータルで管理していく点が、リーダーシップと大きく異なります。
マネジメント能力に必要なスキル
ここで、マネジメント能力には具体的にどのようなスキルが必要なのか、解説していきましょう。
リーダーシップ及び意思決定のスキル
人材を管理、指導するために必要とされるのが、リーダーシップです。また、取り組んでいるプロジェクトの方針やゴールを明確に部下に示すことができる、意思決定のスキルも欠かせません。
リーダーシップに重要なのは、部下の心を動かすような配慮ができること、部下が心地よく働ける雰囲気を率先して作り出すことです。
リーダーとは、何も言わなくとも、その場にいる人間に影響を与えてしまうもの。そのため、リーダーは自分自身が周囲にどのように見られているのか、自身を俯瞰する視点を養うことが重要なのです。
さらに、組織の方向性や経済状況をマクロ視点で考え、状況に応じて意思決定できる判断力と勇気も必要でしょう。
プロジェクトマネジメントのスキル
プロジェクトマネジメントのスキルとは、プロジェクトをどのような手順で進めていくのか計画を立て、目的を達成できるようにしっかりと業務をコントロールすることです。
チームリーダーは、どのようなゴールに到達すれば目標達成となるのか、定義する必要があります。そこから、ゴールにたどり着くまでのタスクを逆算で考え、成功するためのプロセスを構築しなければなりません。そのため、プロジェクトマネジメントの能力も身に付けておくべきスキルの一つです。中でも、成功までのプロセスを論理的に考える力を養うことが重要となります。
問題発見・解決のスキル
マネジメント能力には、問題発見・解決のスキルも欠かせません。そのために必要なのが「ロジカルシンキング」です。ロジカルシンキングとは、論理的な思考を意味し、感情的ではなく、論理的に物事を考えて伝えることを指します。
ここで、ロジカルシンキングを行う方法を具体的にご紹介しましょう。もし、トラブルが起こった場合、なぜこの問題が勃発したのか、複数の理由を見つけ、考えられる結論を導き出します。結論が導き出せたら、頭の中を整理するために紙などに理由や結論を書き出しておくとよいでしょう。その際は、なぜそういう考えに至ったのかを、落ち着いて自問自答し、掘り下げていくのです。こうすることで、より論理的に物事を考えられるようになるでしょう。
さらに、ロジカルシンキングによって導き出した結論にしっかりと根拠を付けて、明確に周囲に伝える力も必要です。そうすることで、問題を客観的な視点で解決できる可能性が高まるでしょう。
コーチングスキル
コーチングスキルとは、相手と同じ立場に立って、相手の持っている可能性や能力を引き出すスキルのことを指します。
コーチングスキルを養うためにまず必要なのが、部下の持つさまざまな可能性を信じること。そのうえで、彼らの話を否定することなく傾聴することによって、部下は自身のビジョンや気持ちに気が付くことができるのです。
加えて、将来の可能性を導き出してあげられるような質問を投げかけることができる「質問力」も欠かせません。上司が適切な質問を重ねることで、部下の「こんなことをやってみたい」「自分はこれができるかもしれない」という前向きな欲求に繋がっていくでしょう。
プレゼンテーション・ファシリテーションスキル
プレゼンテーションスキルとは、話す順序を論理的に組み立てて、わかりやすく伝える能力のことです。一方ファシリテーションスキルとは、会議をスムーズに進行するために論点を整理したり、参加者のモチベーションを上げて発言を促したりする能力を指します。
まずはプレゼンテーションスキルを習得し、自分の話を相手にしっかりと伝えられるようにしましょう。そして、それをベースに、会議などの場で参加者が意見を出しやすいような雰囲気作りや、話が脱線したときの軌道修正など、ファシリテーションスキルを養っていくことが大切です。
マネジメント能力の習得に役立つ心理学
続いて、マネジメント能力の習得に効果的な心理学を、具体的な活用法と共にご紹介していきます。
ウィンザー効果
ウィンザー効果とは、「直接言われるよりも、第三者が間接的に言っていることのほうが信頼性が高くなる」という心理的効果です。例えば部下を叱責した後、第三者にフォローの言葉を伝えてもらうのも、ウィンザー効果を活用したマネジメント法です。
厳しく叱責された直後に「でも、いつも頑張っているな」などと言われても、人は「怒った後だから機嫌取りに言っているだけだ」と素直に受け取れないものです。でも、まったく関係ない人から「〇〇さんは仕事が丁寧で信頼できる、って言っていたよ」と言われると、素直に受け取ることができ、自信に繋がるもの。そのためにも普段から、「その場にいない人のことを褒める」習慣を付けておくとよいでしょう。
勇気づけ
「結果だけでなく、結果に至るまでの考え方や、プロセスについても対等な立場で評価して成長機会を与える」心理学を勇気づけといいます。
例えば目標を達成した部下に対して「目標達成おめでとう!」とだけ伝えるのではなく、「朝早く出社したり、仲間に的確なサポートをしたり、コツコツと努力していた結果だね。信頼できる仕事をしてくれて、本当にありがとう」などと伝えます。
このように、部下が取り組んだ業務に対して結果だけを見て評価するのではなく、その仕事に取り組んだ姿勢や行動にも目を向けて共感し、勇気づけることが大切です。そうすることで部下は、結果に至るまでのプロセスにも価値を見出すことができ、自発的に仕事に取り組もう、という気持ちになるのです。
動機付け
動機付けとは、行動を起こす要因のことです。動機付けには「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の2種類があります。
外発的動機付けは、報酬や昇進など、外部からの干渉が要因となって行動を起こすことであり、内発的動機付けは、やりがいや達成感など、自分自身の思考や感情が要因となって行動を起こすことです。
上司としては、内発的動機付けによって高いパフォーマンスを発揮できる組織が理想。「やりたい」という気持ちで仕事に取り組むほうが、満足度も高くなります。
とはいえ、そこへ至るには外発的動機付けがきっかけとなっている、というパターンも少なくありません。重要なのは、現在部下が外発的動機付けと内発的動機付けのどちらで仕事に取り組んでいるのかをしっかりと見極め、適切な声掛けをすることです。
外発的動機付けで仕事に取り組んでいる部下には「次のプロジェクトでは、君をチームリーダーに任命したいと思っているんだ。知識を身に付けるのは大変だけど、キャリアにも役立つし、特別報酬が出ることも決まったよ」などと伝え、やる気を起こさせます。
内発的動機付けで仕事に取り組んでいる部下には「〇〇さんの応対のおかげで顧客満足度が飛躍的に向上したよ。これからも顧客の視点で仕事ができる〇〇さんに期待しているよ」などと声掛けをするとよいでしょう。
今すぐ実践できる!マネジメント能力を高める方法
最後に、今すぐ使えるマネジメント能力を向上させる方法をいくつかご紹介しましょう。
他の人のスケジュールを把握しておく
自分のスケジュールや業務計画と同じくらい、他の人たちのスケジュールも把握しておきましょう。今忙しいのは誰で、時間に余裕があるのは誰か、この先仕事を任せられる社員は何人いるかなどを把握しておくことで、優先事項を考えて計画を練り、スムーズに実行できるようになります。
常に冷静に考える
クライアントから無理な要望がある、部下が指導に反発するなど、感情的になりそうな場面でも、冷静に対処するように努力しましょう。どんな問題に直面したときでも、ひと呼吸おいて考えるクセを付けておくことが大切です。
優先事項を明確にする
いくつかの業務を同時進行する場合には、やるべきことを1つずつ洗い出して優先事項を明確にすることが重要です。対応や処理に掛かる時間も考えて、順序立てることで、余裕がないときでも冷静な指示が出せるようになるでしょう。
まとめ
マネジメント能力を身に付けることで、組織を円滑にまとめることができるだけでなく、自分自身の業務スキルや人間力の向上にも繋がります。一朝一夕で身に付くスキルではありませんが、積極的に経験を積むことで、着実に自分のものにすることができるでしょう。1つ1つ実践してみてください。