「今やめたらもったいない!」と後に引けなくなり、結果損をしてしまった、そんな経験はありませんか?この状態を指す言葉が、サンクコストの過大視です。ネガティブな意味合いがありますが、上手く使えば自分自身の成長やマーケティング効果などに活用することもできます。もったいないを味方につけるサンクコストの過大視の活用法について、詳しく確認していきましょう。
サンクコストの過大視とはどんなもの?
サンクコストとは、日本語に訳すと埋没費用(sunk cost)となり、回収することのできないコストを意味します。ここでのコストに含まれるのは、お金や時間、労力、感情のこと。サンクコストの過大視とは、これまでにかけた費用や時間、労力がもったいないという思いから、投資がやめられない状態を指す経済用語です。心理学ではサンクコスト効果と表現されます。
サンクコストの過大視の事例では、イギリスとフランスが共同開発していた超音速旅客機コンコルドが有名です。開発中にたくさんの問題が生じ、このまま進めても採算がとれないと分かっていながらも、多額の費用をかけていたために中止できず、最終的には赤字が膨らみ続け数兆円の負債を抱えることになりました。
この事例から、サンクコストの過大視はコンコルドの誤謬やコンコルド効果と称されることもあります。「これ以上続けても損と頭では理解していても、やめる判断ができない」という心理状態は、日常生活においても事業においても、決して珍しいことではないでしょう。
身近なサンクコストの過大視の例
サンクコストの過大視に陥った状態は、日常のあらゆる場面で起こり得ます。事例を見ていきましょう。
事例1.課金したゲーム
ゲームの課金もサンクコストのひとつ。ひとたび課金してしまうことで、負けが続いているゲームにもかかわらず、「課金したから今さらやめられない!」と、意地でも続けてしまうケースは、身近なサンクコストの過大視の事例です。また、無料でできるゲームでも、これまで費やした労力がもったいなくて、なんとなく続けてしまうこともあるかもしれません。
事例2.値下がりした株
保有している株が値下がりした場合、損失を広げないためにすぐに売ってしまうのがベストでしょう。しかし、頭では理解していても、行動に移せない人も少なくありません。「きっとまた回復するはず」「ここで手放したらもったいない」と手元に残し、良くない状態に陥ってしまうことも、サンクコストの過大視の事例です。
事例3.恋愛
「別れるべきだと分かっているのに、これまで相手に費やした時間やお金を考えると別れられない」といった事例もあるように、実は恋愛にもサンクコストの過大視が見られます。ここでのサンクコストは、お金・時間・労力。尽くせば尽くすほど好きになったり依存したりしてしまうのは、サンクコストの過大視の影響なのかもしれません。
上記の事例について、思い当たる経験もあるかもしれません。費用の面だけで考えると、すぐにやめることで損はするものの、これ以上の損失は防ぐことができるはず。しかしながら、もったいないという思いが先行することで、合理的な判断ができなくなってしまうのが、サンクコストの過大視の特徴です。
もったいないという精神は決して悪いものではありませんが「投資のつもりが浪費になっていた」などということのないよう、客観的な判断が必要になります。
サンクコストの過大視にはメリットもある!
本来なら避けておくべきサンクコストの過大視ですが、実は悪いことばかりではありません。上手く活用することで、メリットをもたらすこともあります。ここでは、サンクコストの過大視がもたらすメリットについて押さえていきましょう。
ある程度のコストを支払うことで、習慣や努力の継続に繋げられる
サンクコストの過大視を踏まえて、自分自身の心理をコントロールするため、結果を出したいものにはある程度お金をかけるのもひとつの方法です。コストをかけることで、やめたらもったいないと自分自身に思わせ、習慣や努力の継続に繋げることもできるでしょう。
例えば英会話を習得したい場合。お金をかけずに勉強する方法はいくつもありますが、お金をかけないと「もったいないから頑張ろう」という気持ちは生まれないでしょう。
多少費用がかかってもスクールに通う、教材を買うなどすることで、「せっかくお金を払ったのだから、もとがとれるよう頑張ろう」という動機づけができます。その結果、習慣や努力の継続など、結果に繋げることができるかもしれません。
マーケティングに活用することができる
サンクコストの過大視は、マーケティングテクニックのひとつでもあります。顧客に何かしらのサンクコストを負担してもらうことによりサンクコストの過大視の状態を作り、売上や顧客単価、成約率のアップや顧客離れの防止に繋げるのが目的です。
「買わないと損かも!」「契約を続けた方がお得かも」という気持ちを上手く刺激するのが、マーケティングにおける活用方法です。サンクコストの過大視を活用しているビジネスは、私たちの身近にもたくさんあります。
サンクコストの過大視をマーケティングに活用する具体例
マーケティングにサンクコストの過大視を活用するためには、具体的にどのような方法があるのでしょうか。実際にマーケティングで応用されている事例を用いて解説していきます。
入会金・年会費を設ける
よくあるサンクコストのひとつが、入会金や年会費です。入会金や年会費がサンクコストとなり、「しっかり利用しないともったいない!」「すぐにやめたらもったいない」などという気持ちが生まれます。
利用頻度の増加や解約の抑止力にも繋げるのが、入会金や年会費の狙いです。顧客が来店したり利用したりする労力を回収しようという気持ちが生まれ、購買行動に繋がることもあるでしょう。
キャンペーンを設ける
よくある「〇円以上お買い上げで~」といったキャンペーンも、サンクコストを狙ったものです。以下のようなキャンペーンを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
- 700円以上購入でくじ引きができる
- 5,000円以上で送料無料
- 3つ購入で1つ無料
- 次回ご利用時に30%オフ
「せっかくなら送料無料の方がお得!」と顧客単価アップを図ったり、「次回安くなるならまた行こうかな」とリピーター獲得を狙ったりといった効果が期待できます。
無料お試し期間を設ける
無料お試し期間や無料体験キャンペーンなどを設けるのも、サンクコストの過大視を活用した方法です。月額制の動画や雑誌、マンガ見放題などのサービスによく見られます。
無料なので費用はかかっていないものの、申し込みにかかった手間がサンクコストとなります。「せっかく申し込みしたからすぐにやめるのはもったいない」という気持ちを生み、無料お試し期間の後、そのまま継続して有料会員になってもらうのが狙いです。
まとめ
サンクコストの過大視は、誰しも知らず知らずのうちに陥ってしまいがちな状態です。過去の損失だけにとらわれず、合理的な判断をすることが、サンクコストの過大視を避けるポイントです。
また、「もったいない」の気持ちを味方につけ、自分自身の成長やマーケティング効果を狙うことが、成功のヒントになるかもしれません。
サンクコストの過大視をテクニックとして上手く使えるようになるためには、知識やノウハウを知るだけでは不十分。サンクコストの過大視を日常生活で上手く取り入れながら、自分自身の才能にも目を向けてみてください。