ヒューレット・パッカード(HP)社から学ぶ二代目経営者の才能の活かし方

こんにちは! 才能心理学協会・認定講師で二代目経営者コーチの澤田浩一です。

 

前回、経営的な観点からものごとを見ることができる社員を育てた例としてリクルートの江副正浩氏を取り上げました。

 会社が進むべき方向やビジョン、そしてビジョンを達成するための目標をトップがすべて決める場合はそのような社員を育てる必要はありません。

しかしネット社会で情報に満ち溢れ、さまざまな価値観が生まれているこの時代にそのような方法で社員のモチベーションが保てるとは思いません。

むしろ会社が進むべき方向性やビジョンについて社員が共有し、それぞれの役割と責任の下で自由に仕事ができるような環境こそ、社員のモチベーションが高まると思います。

なぜなら社員一人一人は入社してから何らかの能力を身に着け、そしてそれを発揮したいと思うからです。

まして若者層の労働力が年々減少し、新しい雇用が困難な時代です。これからの中小企業の経営者には社員がやりがいを持ち、職場で能力を活かせるような環境作りが求められています。

 

私の会社でも現在3人の部門長が目標についての方針を合議で話し合って決め、それに基づいて各リーダーが目標を立て、実行しています。

もちろん最初からこのようになったわけではありません。

目標の立て方から教え、権限を委譲して自由に仕事ができるようにすることで、次第に経営者目線での目標が立てられるようにレベルアップしてきたのです。

 

こうなるまでに私が一番気を付けた点があります。

それは一言で言うと「部下に対する不安を手放し、信頼する」ということです。

 

経営者には会社に対する責任があります。責任があるとどうしても人は自分で管理したくなります。

でも実際には部下に自分の仕事を任せていくのですから自分の「管理」を手放さなくてはなりません。

しかし結果については責任を持たなければならないので、どうしてもそこに不安を感じるのです。

また人は自分が持つ権限の一部を他人に譲るということに不安を感じます。権限は自分で勝ち得たものだと思うからです。

したがって部下に権限を委譲して自由に仕事ができるようにするためには、こういった不安に経営者は対峙しなければなりません。

そして「自分には不安があるのだな」と素直に認め、「部下を信頼しよう」と思い、不安を手放すことです。

 

会社が成長していくなかで、不安と対峙し、部下に仕事を任せた経営者の例としてヒューレット・パッカード社の創業者、デービッド・パッカード氏がいます。

 

 

HP社は現在ではパソコンやプリンターのメーカーとしてよく知られていますが、元々は電子機器の測定や検査のための器機を製造していた会社です。

スタンフォード大学出身のデービッド・パッカード氏とビル・ヒューレット氏が恩師に勧められて1939年に創業しました。

スタンフォード大学との繋がりを武器に、他社にない独創的で顧客の要望に沿った設計で製品の種類を増やしていき、成長し続けます。

やがて計測システムに使用する自動制御装置の開発からミニ・コンピュータの開発へ向かい、その技術はパソコンやプリンターなどのコンピュータ分野に拡がっていきます。

会社が成長し、大規模になるにつれ、進行中の仕事をすべて管理することは難しくなりました。

そのためにパッカード氏らは一人一人のやる気や自発性、独創性を育てる組織環境を維持し、目標や目的に向かう自由裁量を広く認めました。

自由裁量を認めるということは、自分の持つ権限を手放すことの不安と対峙し、部下を信頼すること。

彼は部下を信頼し続けることで、会社の成長を維持しました。

 

経営者やマネージャーが自分の権力を手放すことに不安を感じることの弊害について彼は著書「HPウェイ」の中で実例を挙げています。

それはHP社がコンピュータ・ビジネスの分野に乗り出した1990年代の出来事です。

コンピュータ・ビジネスは今までHP社が行ってきた測定や検査機器の分野とはまったく異なる分野だったため、コンピュータ事業部に加えて、いろいろなプロジェクトチームや評議会、委員会を作ったそうです。

その結果、複雑な官僚組織が生まれ、意思決定に時間がかかるようになりました。

1990年代といえば日進月歩のコンピュータ競争時代。

意思決定の遅さは事業を成長させるにあたって致命的になります。

そのころ創業者の二人は経営から手を引いていましたが、一時的に復帰。

何層もあった管理体制を減らし、コンピュータ事業部門に独自で計画して決定する権限を与えることで危機を克服したそうです。

経営者が自分の不安に対峙し、手放し、部下を信頼することが経営者目線を持つ社員が育ちます。

もちろんこういった不安に立ち向かうことは容易なことではありません。

ではどうすれば良いのか?

 

私の経験から言うと、それは「何か言いたくなったら口にチャックすること」です。

部下の行いを見ていると、どうしても経営者は口をはさみたくなります。

それは経営者であるあなたがたの方が部下よりも会社のことをよく知っていると思うからです。

しかし果たしてそうでしょうか?

部下は今まで現場の第一線で働いてきた人です。

彼らには彼らの現場から学んだ知恵があります。

すぐにはあなたの思うようなことはしないかもしれませんが、見守ってください。

そうするといつの間にかあなたが思いもしなかったアイデアを産み出します。

実際、私もそういう場面に出くわしました。

 

経営者が不安に感じて何か言いそうになったら「口にチャック」してください。

そして見守り、観察してください。

もちろん会社の存続に関わるような場合には口を挟む必要もあるでしょう。

でも基本は「口にチャック」。

それが部下を育てるコツのひとつです。

 

それでも不安に感じるなら、私にご相談ください。みなさんをサポートします。

 

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この記事を書いた人

精神科ソーシャルワーカーを経て、経理・総務・人事等の業務に従事後、2001年より計測器メーカー㈱サワダ製作所を経営、中小企業経営者のパートナーとして才能心理学、TOC、NLPを使った組織作り支援を展開。

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