こんにちは! 才能心理学協会・認定講師の澤田浩一です。
先日、京都国立近代美術館に「生誕110年 東山魁夷」展を観に行きました。
一番のお目当ては唐招提寺、御影堂に収められている障壁画。
現在、御影堂は大修理事業で拝観することができないので、この機会にと気軽な気持ちで出かけたのですが、行ってみると正直驚きました。
東山魁夷の作品の前に立つと、流れる水や打ち寄せる波の音、森林から聞こえる木々のざわめきが聞こえ、木の香りがし、降り積もった落ち葉の感触、雪が降り積もる深々とした静けさを感じます。
まるで作品に包まれ、その空間にいるような感覚です。
「自然の中にいる」と言っても過言ではありません。
彼が清澄で深い情感をたたえた風景を描くようになったターニングポイントは戦争末期だと言われています。
当時、彼は熊本で爆弾を抱えて敵に突入するという自爆訓練に明け暮れていました。
あるとき、熊本城から見える景色に生の輝きを見るという体験をします。
それは死を覚悟して初めて見えた命の輝き、自然の美しさ、その中に自分もいるという体験です。
彼はその後、「道」という有名な作品を描きます。
作品には一本の太い道が上に向かって描かれており、どこまでも続いています。
彼は作品についてこう語っています。
「『道』という作品を描いたことは、私にとって大きな意義を持つものであった。
(中略)
未来へと歩み出そうとした心の状態、
これから歩もうとする道として描いたところに、生への意志といったものが感じられる」
(東山魁夷「波」(新潮社))
私はこの作品を観たとき、彼が自分の進むべき方向を見つけ、上に真っすぐ延びる道のように作品を描き続けることで一生をかけて作風を高めていく決心をしたのだと感じました。
才能も同じです。
自分が心から本当にやりたいことを見つけ、能力を高めていくことが才能開花につながります。
心から本当にやりたいことを見つけるのは、才能開花の第一歩にすぎません。
見つけた後の一歩一歩の積み重ねが大事だと思います。
東山魁夷の「道」は、たゆまぬ積み重ねを続けていく決意を表す作品です。
そして積み重ねた結果のひとつが名作「唐招提寺御影堂障壁画」ではないでしょうか。
この展示会を通してもうひとつ気が付いたことがあります。
それは、ターニングポイントとなる体験は戦争末期の熊本での出来事ですが、実はその前にも自然と一体となる体験を幾つかしていること。
例えば、彼は少年期を神戸で過ごしていますが、病気がちで神経質な子供だったそうです。
そんな彼を母親は神戸の丘に時々連れて行ったそうですが、丘からの眺めの快さに心身が清められるのを感じたと述べています。
また中学のときに休学して親から離れて一人になり、淡路島へ行きますが、滞在先の海辺の風景に安らぎを得たと言います。
画家になる決心をしたときには友人と木曽川沿いにキャンプしながら旅をしますが、そこで見た三国の風景に心を動かされたとも言います。
ターニングポイントとなる体験の前にも彼は自然の中にいる自分を体験しているのです。
ただ明確に気づいていなかったので、初期の作品には十分表わせていませんでした。
繰り返しますが、才能開花は心から本当にやりたいことは何かを明確に意識することからはじまります。
明確に気づくためには自分がどのような体験をしてきたのか、そこでどのように感じたのか、どのような欲求をもったのかを意識して探っていくことが必要です。
しかし日常生活の中では余程のことがない限り、今までしてきた体験を振り返ることはないので気づきません。
才能心理学ではそのような機会を提供し、心から本当にやりたいことを見つけるお手伝いをします。
11月からまた新しい期が始まります。
みなさんがどのような才能を見つけていくのか、そのお手伝いをするのが楽しみです。
*「生誕110年 東山魁夷」展は10月8日まで京都国立近代美術館、
10月24日からは国立新美術館(東京)にて