「部下に指示しても、仕事のクオリティが低いから、結局、今まで自分でやっていました」 「でも、今はAIに頼んでいます。クオリティも高いし、早いですから」
最近、そんな話を聞くようになりました。
確かに、目先の効率だけを考えれば、AIを使いこなし、リーダー自らが手を動かすのが最短ルートに見えるかもしれません。
しかし、それでは人材が育ちません。
「人が育たなければ、いずれ自分たちが困る」ことは、リーダーの皆さんもよく分かっています。けれど、日々の忙しさに追われ、具体的にどう手を打てばいいのか、良いアイデアが見つからない。
そんな時、決定的に欠けているのが、「部下の試行錯誤」という視点です。
「部下の試行錯誤」を効率が悪いと切り捨てるのか、それとも「部下の試行錯誤」こそが成長に不可欠な土壌だと捉えるのか。
部下に単なる「業務」を渡すのか、それとも成長のための「場」を渡すのか。その判断ひとつで、5年後のチームの未来は大きく変わります。
単なる「作業」で終わらせていないか
多くの現場で行われているのは、単なる「業務」の切り出しです。
- 「このデータをこのフォーマットに入力しておいて」
- 「このマニュアル通りに処理を進めて」
こうした指示は、受け取った側にとっては、ただ処理すべきノルマであり、早く終わらせるべき「作業」でしかありません。そこには、能力を発揮する喜びも、経験が蓄積される感覚も乏しいものです。
これは例えば、小さな子供をお風呂に入れるときに、「パパ(ママ)が洗い終わるまで、ここで静かに遊んでいてね」と、単なる「待ち時間」を過ごさせているようなものです。
親としては手際よく入浴を済ませ、ひと段落つくのが目標かもしれませんが、子供にとっては、そこは何の関与もできない「手持ち無沙汰な場所」でしかありません。
才能を育てるリーダーは「場」を渡す
一方で、才能を育てるリーダーは、業務ではなく「場」を渡します。 「場を渡す」とは、その仕事の中に、相手が自らの意思で動ける「舞台」を用意するということです。
先ほどの入浴の例でいえば、子供にシャワーを渡し、「パパの足を流して」と頼んでみるようなもの。
その瞬間、お風呂場は「洗われるのを待つ場所」から、「子供が貢献できる舞台」へと変わります。
子供なりに工夫し、相手の反応を見ながらシャワーを動かす。 「足が終わったから、次は手を流してみようかな?」 その試行錯誤のプロセスすべてが、子供にとって「自分は貢献している」という実感を伴う、かけがえのない経験の土壌になります。
「正解」ではなく「貢献」を探し始める
ビジネスの現場も同じです。
「君の視点で、このプロジェクトに新しい風を吹き込んでほしい」
「契約は取れるんだが、顧客サポートが手薄なんだ。君の経験を生かして、チームで『手厚い顧客サポート』ができるアイデアを出してくれないか」
そうやって「場」を託された部下は、単なる「正解(手順)」を探すのをやめ、自らの才能を使った「貢献(価値)」を探し始めます。
5年後のチームのために、いまできること
今日、誰かに仕事を頼むとき、少しだけ自分に問いかけてみてください。
「これはただの作業の切り出しか? それとも、相手が主役になれる舞台の提供か?」
相手を単なる「処理担当者」から、共に未来を創る「仲間」として接する。 この小さな変化が、部下の才能を呼び覚まし、全員が活躍するチームに成長する一歩になるはずです。
あなたは、今日誰に、どんな「舞台」を提供しますか?


