こんにちは! 才能心理学協会・認定講師で二代目経営者の澤田浩一です。
前回は二代目、三代目の兄弟がうまく経営していくために挙げたポイントのうち、二つをソニーの創業者を例にして述べました。
今回は、三つ目の「ファミリーが代々で受け継いでいるDNAを認識すること」です。
ファミリー経営はそれが二代、三代と続くと、そのファミリーならではの強みを見ることができます。その強みが何なのか、それがファミリーが代々で受け継いでいるDNAです。
例えば柿安の赤塚家。
柿安は初代、赤塚安次郎氏がそれまで行っていた柿の行商を止め、牛鍋店へ移行したことから始まります。
江戸に行った時に牛鍋の人気を見て「これは面白い。自分もこの商売をやってみたい」と思ったことがきっかけだそうです(参考「柿安の食べ物商売心得帳」(赤塚保著 FB出版)。
明治4年(1871年)の出来事です。
二代目の赤塚金太郎氏は、どうせやるなら美味い牛鍋店をやりたいと、牛肉の品質まで遡り、自ら牛肉の飼育事業に乗り出します。
三代目の赤塚二三雄氏は会席料理を取り入れて柿安を高級料亭として確立します。また精肉事業の拡大も図ります。
二三雄氏は51歳の若さで亡くなり、残された妻のひでさんと息子たち兄弟で協力し合い店を盛り立てていくのですが、4代目の安則氏が社長のときにレストラン事業を急拡大させて全国規模のブランドに、そして弟で五代目の保氏は総裁事業に参入、柿安ダイニングを展開します。
五代に渡る柿安の経営者に共通して見られるのが、新しい事業に「挑戦すること」。
これが赤塚家に代々伝わるDNAです。
才能心理学では自分が本当にやりたいことをコア・コンセプトと言いますが、赤塚家では代々このやりたいこと、コア・コンセプトが受け継がれてきたと言えます。
そしてこのDNAは六代目の保正氏にも受け継がれています。
保正氏は日経ビジネスのインタビュー(2016.03.14 No.1832)で「私も先代に倣って何かに挑戦したいという気持ちが自然と芽生えていました。」と述べています。
そして現在、保正氏は和菓子に注目し、「口福堂」という和菓子店を全国に展開しています。
二代目、三代目が兄弟で経営する場合、先祖から代々伝わる自分たちファミリーの強み、DNAは何なのか、そしてそのDNAは自分にも流れているのか、また自分もそれをやりたいと思っているのか、それを振り返ることで未来に向かう方向性を一致させ、前回述べたように明確な目標と役割分担をすることで個人の才能が伸びるとともに事業も伸びるのではないでしょうか。
以前にも述べましたが、日本には法事という兄弟、親類一同が集まり、先祖を供養する場があります。そういった場を利用することで、自分たちが受け継いできたDNAについて語り合うことはファミリー経営には有効な手段だと思います。