こんにちは! 才能心理学協会・認定講師で二代目経営者の澤田浩一です。
二代目、三代目になると兄弟で会社を経営する場合がありますが、このときよくお聞きするのが兄弟間での意見対立で悩んでいるという話です。
例えば兄である社長が新しい仕組みやシステムを導入したいが弟がそのことに懸念を示している、あるいは弟が新たに取り組みたいことがあるが、兄が賛同してくれないといったようなことです。
中小企業の場合、社長が会社のオーナーでもあるので、社員が反対意見を持っていても「社長が言うことだから」と最終的には「とりあえず社長に従おう」という形になることが多いのですが、兄弟で会社を経営している場合、なかなかそうはいきません。
ともに「自分は先代社長の子ども」という自覚がありますから、それぞれが会社に対して強い想いがあり、経営で意見の相違があると悩みも深くなります。
まして同じ環境で育った家族なので感情的なもつれも出てくるでしょう。
会社をうまく回していくためには社長と社員との間の温度差、しいてはお客さまと会社の温度差をいかに縮めていくかが大切です。なぜなら前回も触れましたが、何かを成し遂げたいという熱量がその会社の勢いになるからです。
そういう意味合いにおいて兄弟間のベクトル合わせをいかに行うかが兄弟で経営していく一つのポイントになります。
では兄弟間に対立が起きたときはどのようにすれば良いでしょうか?
まず大事なのは兄弟間の対立は、本来は「無い」と認識することです。
もともと会社に何らかの問題や課題があって、それに対して何かしようと兄も弟も考えているわけですから、対立は兄弟間の対立(兄VS弟)ではなく、「問題VS兄弟」の対立です。
ただ問題に対しての考え方が兄弟で異なっているために、見かけ上「兄VS弟」の対立になっている、そのことをまず認識することが大事です。
人は同じ出来事に出会っても認識の仕方はひとりひとり異なります。
なぜなら人は外部からの情報のごく一部しか認識できないからです。NLPでは人は毎秒200万ビット(400字詰め原稿用紙313枚程度)の情報を得ますが、そのうち人が五感を通して認識できるのはわずか毎秒134ビット(全角文字で8字程度)だと言っています。
しかも入ってきた情報の処理の仕方は人それぞれによって異なります。同じ環境で育った子ども同士でも認識の仕方は異なるのです。
だから次に大事なことは、目の前で起きている出来事に対して兄弟それぞれ捉え方が違うのだと認識した上で、問題や課題に対して自分が思い浮かんだ対応策について、なぜ自分はそのように考えたのかということを振り返ってみることです。
兄弟ともに先代から事業を引き継いだのですから、「会社をよくしたい」「うまく経営したい」「利益を増やしたい」という思いは共通のはずです。目的は兄弟とも同じなのです。
違うのは目的を達成するために導き出した、「どうするか?」という答え。
自分は「こういうふうにしたいが、なぜそう思うのか?」ということについて自分を振り返ると同時に、「兄(または弟)はどうしてこういうふうに考えるのか」ということを考えてみることが大事だと思います。
例えばクレームが発生して、二度と起こさないようにするにはどうすれば良いかを考えるとしましょう。
そのとき業務プロセスを丁寧に見直して対応することに心が動く人もいれば、既存の業務プロセスに新しいアイデアやシステムを入れることに心が動く人もいます。
自分はなぜどういうことに心が動くのか、なぜそう思うのかを認識すること、そして兄(弟)はどのように考えているのかを知ることは、兄弟間の対立を解消する肝になります。
そしてお互いがWin-Winの関係になるように第三の方法がないのか、自分が考えていること、あるいは兄(弟)が考えていることに、さらに新しいプラスアスファのアイデアを付け加えることでお互いがやりたいことが満たされないかを考えることです。
先程の例で言えば、もし自分が業務プロセスを丁寧に見直すことに心が動くならば、兄(弟)の新しいアイデアを業務プロセスに取り入れつつ、入れ込んだ業務プロセスを詳細に眺めて他に問題はないのか、もしなければどのようにその業務プロセスを実行に移すかを考えてみるということを行ってみると良いでしょう。
そうすることで兄弟ともに目的に向けたWin-Winの仕事ができるのではないかと思います。
また私は兄弟間のお互いの考え方を常日頃知っておく習慣を身に着けることをお勧めしています。
その方法として例えば冠婚葬祭など家族一同が集まる場を利用するのが良いでしょう。特に法事は先祖を振り返る場なので創業者や先代の考え方や思いを振り返り、今後の会社運営について話し合う絶好の機会です。
海外のファミリー企業では、経営陣が集まる取締役会以外にファミリー評議会のようなものを設けて、ファミリー間の対立を解消し事業運営をスムーズに発展させていく仕組みがあります。
日本には法事など昔から家族が集まる機会が慣習として設けられているのですから、それを利用しない手はないでしょう。そういった家族一同が集まる場を利用してお互いの考えを知っておくことは兄弟間の意見の対立を解消し、会社の熱量をひとつの方向に持っていくための下地作りになると思います。