こんにちは! 才能心理学協会・認定講師で二代目経営者の澤田浩一です。
中小企業の二代目、三代目は親族以外の人がなるケースも最近増えていますが、まだ多くは息子や娘が後を継ぎます。
もし二代目や三代目であるみなさんが先代の息子や娘なら、会社を経営する上でどうしてもクリアして欲しいことがあります。
それは「先代に当たる親のことを理解し、ありのままに受け入れる」ということです。
例えば事業を行う上で、先代である親のようになりたくない、自分の方が正しいと、親に認めさせよう、打ち負かそうとする気持ちがあったりしませんか?
あるいは逆に大好きな尊敬する親のようにならないといけないと、どこかで思い過ぎていることはありません?
もし親に認めさせよう、打ち負かそうと思って事業をしているなら、事業を急拡大させることに囚われすぎてしまうかもしれません。
またその後事業が成功しても、そのあとぽっかりと心の中に穴が空いたような空虚感に陥るかもしれません。
逆に親のようにならないといけないと思っているなら、そのプレッシャーをいつも感じながら事業を行い、自分にはできないと落ち込んでしまうかもしれません。
例えば世界的に有名なスポーツ関連商品のナイキを創業したフィル・ナイト氏。
ナイト氏の自伝「靴にすべてを。」では、彼のお父さんは保守的で世間体を追い求める人であったと言います。
息子への評価も世間体に照らし合わせてのもの。
彼は世間で言うところの一流大学に入り、MBAを取得し、さらに陸軍でも訓練を受けます。
でも世間体に囚われずに自由にしたいと思う息子もいますよね。
ナイト氏もそういう思いが沸き起こった青年でした。
彼はハイスクールのときに入りたかった野球チームに入れてもらえなかったという挫折を味わい、母親に勧められた陸上に夢中になるのですが、そこで出会ったのが父親とは反対に世間体を少しも気にしない大学の陸上コーチでした。
世間体を少しも気にしない性格に憧れ、自由に走ることの喜びと、尊敬するコーチに認められたいという気持ちから一流のランナーを目指します。
ただ一流のアスリートになることは叶いませんでした。
そこで彼はアスリートにはなれなくても、アスリートと同じような気分を感じる方法はないだろうかと、ビジネスを立ち上げることを決意します。
そして立ち上げたのがアスリートのためのシューズの会社。
日本のシューズの出来の良さに目を付け、勝つためのシューズを研究していたコーチと共同で、オニズカ(現アシックス)からシューズを輸入し、全米で販売する会社を立ち上げます。
彼の心の中に強くあるのは、当時は珍しかったベンチャー起業に眉をひそめ、世間体を気にする父と、アスリートとしては期待に沿えなかったコーチの二人に認められたいという気持ち。
その気持ちが事業をする上での原動力となるのですが、その気持ちの強さ故に拡大路線に走り、資金的にはキャッシュが常に足りないという状況を迎えます。
そして最大の危機は、米国に直接進出を図ろうとしたオニズカとの亀裂でした。
彼は新しい会社を秘かに立ち上げ、危機を乗り切ろうとしますが、逆にそれがオニヅカに見つかり、訴訟を起こされます。
その最大の危機を迎えたときに、励ましてくれたのが父親でした。
彼は父親を認め、また父親から認められることで和解します。
そしてその後、新しい会社「ナイキ」は世界的に有名な会社となるのです。
もしあのときに彼が父親と和解していなかったら、ナイキは現在のように大きく成長していたのだろうかと私は思います。
なぜなら和解の後、父親との会話を重ねることで家族の絆が深まり、それが訴訟やその後も起こる資金難の問題を乗り切るためのエネルギーとなったからです。
親と今までどんな関係を築いてきたにしろ、親との関係を冷静に見つめ、親と良い関係を保つことは経営をしていく上で大切なことのように思います。
私も事業を継いでから、ありのままの父を受け入れ、それまでまともに出来なかった会話ができるようになりました。
もう亡くなって十数年になりますが、父の励ましが今の私の事業へのエネルギーになっているのは確かです。
みなさんもご自身の経営への才能をさらに発揮するために、一度両親との関係を見つめなおしてみてはいかがでしょうか?