こんにちは、才能心理学協会・認定講師の澤田浩一です。
前回、技術者としての才能について取り上げました。
著名な技術者に共通していることは、技術者の才能には学歴は必ずしも関係はなく、みな自分が何をしたいのかが明確になっていることについて述べました。
しかし、何がしたいか、だけでは新しい技術を産むには足りません。なぜなら今までに人がやったことがない試みをやろうとすると、十中八九(いやそれ以上に)失敗するからです。
では技術者としての才能を磨くにはどうすればよいのか?
それは失敗しても「あきらめない」ということです。
例えば植松電機の専務取締役の植松努さん。植松電機は北海道にある、リサイクルで使うマグネット全国シェア1位の中小企業ですが、カムイロケットというロケットの開発も行っています。
彼がロケットを開発したかったのは、大好きなおじいちゃんが、テレビでアポロが月に到達した中継を見て、見たこともないほど喜んだ姿を見たから。
ところが中学の進路指導のときに先生から「飛行機、ロケットをやるためには、東大を出なければいけない。お前の成績では、東大に絶対行けない。そして芦別(彼の故郷)という町から東大に行った人も一人もいない。だから無理です。」と言われたそうです。
それ以来、植松さんは「どうせ無理」という言葉を世の中からなくしたい、とロケット開発をしています。
ロケットのエンジンを開発するのに何回も植松さんは失敗します。
最初のうちは、失敗はデータとなり、改良すればよくなりましたが、あるところから何をやってもうまくいかなくなります。
1年間もエンジンの爆発を経験すると、だんだん心がすさんで、「なんか、あいつがいる時に限って爆発すると思わない?」という話までが出てきたそうです。
そうすると理系の人たちは、そういうグラフを描くそうです。
この話は私たちのようなモノづくりをやっていると聞く話です。例えば品質不良でクレームが続くと、「いつもお前のところでクレームが起きる、お前が悪い!」みたいな話になってしまいます。 私の工場でもあります。
でも植松さんはあきらめずに実験を続けます。植松さんは言います。
「あきらめてしまうと、どんなすてきな過去であっても、それは後悔の対象になってしまいます。なぜかというと、あきらめるというのは状態を悪いままほったらかすということを意味しているからです。」
「あきらめないと、状態が少し良くなるのです。状態が少し良くなるまでやめないことを「あきらめない」といいます。状態が少し良くなったら、そこにつながる過去というものは、どんなにつらい過去でも感謝の対象になります。そして笑い話になるのです。」
(植松努の特別講演会 きみならできる!「夢」は僕らのロケットエンジン 現代書林)
島津製作所の田中耕一さんもノコギリの目立て職人であるお父さんを見て、コツコツ仕事をすることの大切さを覚えたそうです。
田中さんはエンジニアの面白さについて、理論的な裏付けがなくても頭の中であれこれ試行錯誤しているうちに何か新しい発見があって、突然、人類の役に立つことができる点にあると言います。
本田宗一郎も、糸川英夫も、屋井先蔵もみんな何度も失敗し、試行錯誤を繰り返しながら、新しい発明や製品を世に送り出してきました。
私の工場でも、最終試験に合格できず、製品が出荷できない、ということがあります。そういうときでもあきらめずに、試行錯誤してお客様の信頼に応えてきました。
「あきらめない」ことは、才能を活かす大切なファクターではないかと思います。
才能とは人との違い。人との違いを生み出すには、試行錯誤的な行動も必要でしょう。
だから失敗も起こります。
そのときに必要なのは「あきらめない」ということ。
私も昨年は才能心理学協会の認定講師となり、また中小製造業へTOC(制約理論)を広める、という活動を始めました。
まだまだ目標には試行錯誤の状態が続いていますが、あきらめずに続けていこうと思っています。
(参考・引用)
好奇心を「天職」に変える 空想教室 植松努著 サンクチュアリ出版
NASAより宇宙に近い町工場 植松努著 ディスカヴァー・トゥエンティワン
植松電機Ⅰ 「夢に向かって」植松努物語 田中実 西原大太郎 インフィニティ
発見!しごと偉人伝 技術者という生き方 上山明博 ペリカン社
TEDxSapporo (植松努さんのTEDでのプレゼンです)