この記事では、社員にやる気が見られないときに試したい「動機付け」について紹介します。
社員のやる気を引き出すのも、上司の大切な仕事の一つ。「もっと部下のモチベーションを上げたい」「社員に成長意欲を持ってほしい」と感じている方は多いのではないでしょうか。
社員のやる気を引き出す動機付けについて、具体的な方法も交えて詳しく解説していきます。
やる気が出ないときに試したい「動機付け」
動機付けには「内発的動機付け」及び、「外発的動機付け」の2種類があります。それぞれ詳しくご紹介しましょう。
内発的動機付け
内発的動機付けとは、「楽しいからやる」「やりたいからやる」という、自分自身の意欲や意思が元となって行動し、さらにその行動を持続させるための動機付けです。
内発的動機付けは外部からの干渉がないため、自分の感情や信条に従って自主的に行動できるので、意欲ややる気が持続し、無理なく行動することができます。
さらに、自分自身の内面から発生したやる気や意欲がモチベーションとなるため、業務に対して意見を言ったり、提案をしたりと活発に行動するようになり、生産性の向上にも繋がるでしょう。
こうして主体的に仕事を進め、目標達成することで充実感、満足感を得ることができ、結果として仕事に価値を見出せるようになります。 このように内発的動機付けにはさまざまなメリットがありますが、一方で興味があるものや、好奇心があるものでないと効果を発揮しない、個人の価値観や信条によって効果に差が出る、全ての社員に広く応用することが難しい、というデメリットもあります。
外発的動機付け
外発的動機付けは、評価、賞罰、そして強制など、外部からの働きかけによって得られる動機付けです。
内発的動機付けに基づく行動は、「行動そのものが目的」であることに対し、外発的動機付けは「目的を達成するための手段」である、という大きな違いがあります。
外発的動機付けは持続して行動する目的が、どの程度自己決定的であるかによって、以下の4つの段階に分かれます。
・外的動機付け…本人は活動することに価値を見出していないが、「褒められたいから」「叱られたくないから」など外部からの強制で行動する、他律性が高い状態です。
・取り入れ的動機付け…行動に対する価値は認めているものの、外部からの強制に従っている状態。罰や不安を避ける、達成感を得る、という目的で行動しています。
・同一化的動機付け…その行動の価値を認めて、積極的に行動している状態。「自分の夢を叶えるため」「将来高収入を得るため」など、持続することで自分の成長や目標に役立つ、と納得して行動しています。
・統合的調整…自分自身の価値観と、行動をする価値観が一致している最終段階です。やり続けているうちに、やることが楽しくてたまらない、という状態です。
外発的動機付けは動機付けの効力が高い、効果がわかりやすい、即効性があるなどのメリットがありますが、その一方で受動的になってしまったり、すぐにやる気がなくなってしまったり、というデメリットもあります。また、やる気を継続するためには、より大きな刺激が必要となります。
「動機付け」でやる気を起こす具体的方法
続いては、内発的動機付け、外発的動機付けを用いてやる気を起こす方法を、具体例を交えて解説しましょう。
内発的動機付けの具体例
内発的動機付けによって社員のやる気を起こす場合は、相手が日頃どのような動機付けで仕事をしているのか、という点に着目する必要があります。
例えば、「自尊心」が動機付けとなっている部下の場合は、「この仕事を任せられるのは君しかいない。君だからこそ、ここまでのクオリティの仕事になっている」と、動機付けの要因にアプローチするような文言で、意欲を高めることができるでしょう。
外発的要因の動機付け
外発的動機付けに対して、企業ができるアプローチは、「昇給」「福利厚生の見直し」「評価制度の見直し」などです。
アプローチをする際は、社員が得られるメリットについてわかりやすく提示することが重要です。例えば、福利厚生をさらに充実させる場合には、「スポーツクラブや宿泊施設の優待制度を設ける」「カウンセリングを設置する」など、さまざまな方法があります。
また、最近ではワークライフバランスが重要視されるようになってきたため、「誕生日休暇」など、社員がプライベートタイムを充実できるような福利厚生を設けるのもよいでしょう。
ただし、ワークタイムバランスのニーズは社員によって異なるため、全ての社員の要望に合致する制度を設けるのは難しいでしょう。そのような場合は、選択可能な福利厚生システム「カフェテリアプラン」を導入してみるのも、一つの方法です。
動機付けの注意点
動機付けを行う際、いくつか注意したいポイントがあります。ここでは、内発的動機付け、外発的動機付け、それぞれの注意点をご紹介していきます。
内発的動機付けの注意点
内発的動機付けを高めるために必要なのは、褒め言葉と、適切な課題設定です。こちらから一方的に課題を押し付ける形になると、相手は「自律性が損なわれてしまった」と感じてしまうでしょう。
また、達成が困難な課題を与えてしまうことも、有能感の阻害に繋がり、逆に本人のやる気を失わせてしまいます。
大切なのはしっかりと話し合ったうえで、相手が意欲を持って取り組み、努力することで達成が可能になる課題を与えることです。さらに、課題を実行させる際は、状況を細やかに把握して、努力が見られる部分はしっかりと褒めるようにしましょう。
また、職場の人間関係がさらに深まり、満足ができるような声掛けを行うことも忘れてはなりません。
このように、内発的動機付けには、適切な声掛けで、課題へ取り組むことへの面白さややる気を感じさせることが、求められるのです。
外発的動機付けの注意点
外発的動機付けを実践する際に、最も注意したいのが「アンダーマイニング効果」と呼ばれる現象です。
アンダーマイニング効果とは、もともと内発的動機付けで行動していたものが、外的報酬を意識して行動してしまうことで、目的が外的報酬を受け取ることになり、結果として内発的動機付けが低下することです。
例えば、業務にやりがいを感じて、プレゼンに力を入れている社員を奨励しようと、報奨金を出した。すると、社員の目的が報奨金をもらうことになってしまい、業務に面白さを感じられなくなってしまった…などが具体例として挙げられます。
一部の人は外発的動機付けが原因で、短絡的な行動に走りやすくなるといった傾向も見られます。具体的には、営業マンが営業成績トップになって報奨金を獲得するために、同僚を陥れたり強引な商品の売り方をしたりする、といった例が挙げられるでしょう。
また、目標達成すれば報酬がもらえる制度は、社員のモチベーションアップに繋がりますが、期待していたほどの報酬が得られない場合は、逆にモチベーションが低下してしまいます。
目標達成すると報酬がもらえるので、それ以上の努力が見込めなくなったり、報酬で操ろうとすることで社員に不信感が芽生え、気持ちが離れて行ってしまう可能性もあるでしょう。
外発的動機付けは効力が強く、即効性があるので、相手の状況をしっかり把握して適切に行わなければなりません。
内的動機付けとしっかりバランスがとれるよう、熟考してから実践するようにしましょう。
まとめ
動機付けは、適切に行えば社員のモチベーションがアップし、ひいては生産性も上がります。しかし、やみくもに実践するのではなく、社員一人ひとりの個性や価値観を尊重するのが大前提です。
動機付けなど、ビジネス心理学の知識やノウハウを、ただ知るだけでは意味がありません。それをマネジメントに活かせるよう、まずは、社員の価値観や能力をしっかりと見つけることが大切です。才能プロファイリングを使えば、社員の才能、モチベーション、価値観を正確に見つけることができます。